メイ首相は下院での欧州連合(EU)離脱協定の承認獲得に向け、最大野党・労働党に歩み寄りの姿勢を示し始めた。同首相は10日、労働党のコービン党首が先に示したブレグジットを巡る五つの要求項目について書簡で回答。EUとの関税同盟に関する見解など相違点は残るものの、総選挙や2度目の国民投票よりも、合意あるEU離脱を目指す点では意見が一致していると強調した。さらに、労働者の権利について新たな譲歩案を示すとともに、経済的に取り残された地域への追加支援を検討する姿勢を示し、労働党議員が離脱協定の支持に回る道を開いた。
コービン党首は6日、メイ首相に宛てた書簡でEU離脱協定に求める5項目を提示。この中で、英国全体がEUと恒久的な関税同盟を結ぶと同時に、EUと域外諸国との貿易協定に対する発言権を得ることを求めていた。メイ首相はこれに対し、「完全に摩擦のない貿易を行うにはEU単一市場への残留が必要となるが、そうなれば労働党もマニフェストで反対したヒトの移動の自由を受け入れることになる」と指摘した。また、コービン党首はEU単一市場との緊密な連携を求めていたが、これについては離脱協定に付随する政治宣言で、「単一市場外で最大限に緊密な関係を築く方針を示した」としている。
一方、同党首が要求するEU並みの労働者の権利と保護については、離脱協定や政治宣言で労働者の権利および環境保護で後退しないことを約束したと説明した上で、この約束を国内法化することを新たに提案した。このほか、コービン党首はEUの規制監督機関への参加も求めたが、メイ首相は、航空・医薬品など規制の多い分野では最大限に緊密な関係を築くとした上で、今後のEU規制の変更については歩調を合わせるかどうかを下院に問う姿勢を示した。また、EUとの安全保障上の連携については、政府と労働党の求めるものは一致していると回答した。
メイ首相は書簡の締めくくりに、両党が「できるだけ早急に会合を持つ」ことを示唆している。一方、合意なきEU離脱も辞さないとする与党・保守党内のEU離脱強硬派は、同首相が超党派で支持されるソフト路線ブレグジットにかじを切ったとみて反発する可能性もある。[労務][EU規制]
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