メイ首相は5日、北アイルランドを訪れ、欧州連合(EU)離脱後にアイルランドとの間の厳格な国境管理を避ける方法を見出すと約束した。6日まで滞在して現地の企業や政党の指導者と会談し、EU離脱協定への支持を求める方針だ。BBC電子版が伝えた。
同首相は「北アイルランドとの約束を守り、北アイルランドで広く支持を獲得するとともに、下院で過半数の票を確保できるようなブレグジットを実現する方法を見出す」と話した。
下院で与党・保守党に閣外協力する北アイルランド・民主統一党(DUP)のフォスター党首は、離脱協定に含まれる「バックストップ(安全策)」について、「アイルランドとの間の厳格な国境管理を避ける一方で、北アイルランドと英国本土との間に国境を生み出すことになり、英憲法に反する」となお反発している。また、北アイルランドの保守穏健派・アルスター統一党(UUP)の元党首で、北アイルランド紛争の終結と和平実現に向けたベルファスト合意の実現に貢献したデビッド・トリンブル氏は、「バックストップ」を含む離脱協定は違法として政府を提訴することを検討している。
メイ首相は、下院が先に「バックストップ」を別の措置に置き換える修正案を可決したことを受け、保守党の下院議員から成る作業部会を設置して代替措置を検討している。ただ、EUのバルニエ首席交渉官は、「離脱協定の再交渉は行わないことでEUは完全に一致している」としている。
■合意なき離脱時の通関を簡素化
英政府は4日、合意なき離脱の場合、EUからの輸入品の通関手続きを一時的に簡素化する「移行的簡素化手順(TSP)」を導入すると発表した。20カ所の港および英仏海峡トンネル経由での輸入が対象となる。関税手続きのためにトラックが足止めされて大渋滞となり、物流に混乱が生じるのを避ける狙い。
EUから物品を輸入する企業は、英歳入関税庁(HMRC)にTSPの登録を行うことにより、国境での関税申告手続きが簡略化される。本格的な申告は入国後1日以内に行い、1カ月以内に関税を支払う決まり。TSP導入から3~6カ月後に見直しを行うが、政府は少なくとも1年間はこれを実施する方針を示している。
ただ、道路運送協会(RHA)は、「システムの設置も職員の訓練もまだできておらず、運送業者や企業には必要な書類を整える暇がない」と反発。合意なき離脱の混乱に企業は対応できないとの見方をあらためて示した。
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