欧州連合(EU)と昨年11月に合意したEU離脱協定を下院が大差で否決したことを受け、メイ首相は21日、今後の方針を示した。同協定に含まれるアイルランド国境の「バックストップ(安全策)」について、各党派の要望を聞いた上でEUと再協議するほか、将来的なEUとの貿易関係について下院の発言権を拡大すると約束。あくまで同協定への支持獲得に努める姿勢を示したが、この代替案が29日に予定される採決で可決される見通しは立っていない。
メイ首相は、下院が同協定を230票という歴史的な大差で否決したことを受け、スコットランド独立党(SNP)、自由民主党、ウェールズ党、緑の党の4野党の首脳や、下院の主要議員と協議してきた。同首相はその結果、政府に対し6項目の要望が寄せられたと説明。このうち、合意なきEU離脱の可能性の排除と2度目の国民投票実施の2項目については、あらためて拒否する姿勢を示した。
一方、残りの4項目については歩み寄りが可能としている。まず、「バックストップ」については、下院の要望を見極めた上でEUと再協議する方針。また、将来的な対EU関係については、下院の特別委員会にEUとの交渉内容を説明し、意見を聞く。ただ、対EU交渉に影響を与えないよう、同委とのやり取りは機密とする。また、スコットランドや北アイルランド、ウェールズの各自治政府や企業の意見もより多く取り入れる方針を示した。
労働者の保護については、ブレグジット後の労働者の権利保護に関するEU離脱法の修正案を受け入れるとしている。また、英在住のEU市民の権利については、成人1人あたり65ポンドとしていた永住権申請の手続き料を無料にする。
なお、最大野党・労働党のコービン党首は、同首相が合意なきEU離脱の可能性を排除しない限り、協議に応じない姿勢を示している。メイ首相は今回、これを遺憾とし、考え直すよう求めた。これに対しコービン党首は、「メイ首相は大差で敗北した現実を否定している」と批判。労働党は今後、EUとの関税同盟を維持や、合意なき離脱の回避に向けた修正案を提出するほか、2度目の国民投票の妥当性も検討するとしている。
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