メイ英首相は13日開かれた欧州連合(EU)首脳会議(サミット)で、先に合意したEU離脱協定の英議会での承認獲得に必要な措置を巡り、EU加盟27カ国から理解を得ることに失敗した。EU側はメイ首相を支援するため、離脱協定の中でも英議会が強く反発しているアイルランド国境の「バックストップ(安全策)」について、これが恒久的措置でないという「確証」を与える段取りを声明で示す予定だったが、急きょこれを撤回。合意なしでのブレグジットに向けた準備を加速することで合意している。
離脱協定には、EU離脱後2年間の移行期間内に英国とEUが貿易協定で合意できない場合、アイルランドと英領北アイルランドの間の国境検査を避けるため、英国全体が関税同盟にとどまる「バックストップ」が盛り込まれているが、与党・保守党のEU離脱強硬派をはじめ多くの議員がこれに反対している。メイ首相はこれを受け、11日に予定されていた英下院での投票を延期。EUと再協議し、「バックストップ」が恒久的な措置ではないという確証を得た上で、1月21日までに再投票を行う意向を示している。これに対しEUのトゥスク大統領は、合意内容の再交渉は行わないものの、英国での離脱協定批准を促す方法は協議するとしていた。
同首相はこの日のサミットの冒頭で、英議会からの承認獲得に向けた案を1時間にわたり説明。「バックストップ」を1年間の期間限定とすることなどを提案した。その後、メイ首相を除くEU27カ国の首脳が対応を協議したが、メイ首相の提案は受け入れられなかった。EUのバルニエ首席交渉官は、「メイ首相が求めているのは再保証ではなく、これまでの交渉で既に否定された古い案を再燃させることだ」と批判している。
EUはサミット後の声明で、「バックストップ」の発動を避けるとともに、これが発動された場合も最低限の期間にとどめるため、貿易協定の迅速な締結を目指すと述べるにとどまった。当初は、これ以上の確証を英国に与えることについても検討する方針だったが、こうした文面は削除されている。一方、あらゆるブレグジットの結末に備え、「全てのレベルで準備に取り組むよう求める」としている。欧州委員会のユンケル委員長はサミット後の記者会見で、合意なしブレグジットへの準備に関する新文書を12月19日に発表する方針を明らかにした。[EU規制]
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