英国のメイ首相は14日、欧州連合(EU)との間で暫定的な合意に達した離脱条件の草案の是非を巡って閣議を開き、主要閣僚の承認を取り付けた。メイ首相はこれを受けて議会の承認を目指すことになるが、与党・保守党の欧州懐疑派の議員からの激しい抵抗が予想されており、予断は許されない状況。しかし、ブレグジット交渉の妥結に向けて大きく前進した格好だ。BBC電子版などが伝えた。
閣議は午後2時(現地時間)から始まり、議論は5時間に及んだ。メイ首相は「長く、細部まで詰めた、熱のこもった討論だった」と振り返り、ブレグジット交渉において「決定的なステップだ」と述べた。その上で、最終的な合意は数日以内に形成されるとの見方を示した。
暫定合意の文書は585ページに上り、英国のEU拠出金の清算、離脱後の在英EU市民および在EU英国民の諸権利、アイルランド国境問題の3項目と、将来的な貿易関係の大まかな枠組みを定めた「政治的宣言」から成る。このうち交渉を遅らせてきた最大の焦点は、貿易協定がまとまらなかった場合に、アイルランドと英領北アイルランドの間での国境検査を回避する手法。EU側が北アイルランドのみを関税同盟にとどめるよう主張する一方、英国側は英国全体が関税同盟にとどまった上で、一方的にこの取り決めを破棄できる条項を付け加えるよう求め、平行線をたどっていた。暫定合意ではこの点について双方が妥協し、英国全体が関税同盟にとどまるものの、EUの合意なしにはこの関係を破棄できないとした。
メイ首相はこの日の臨時閣議に先立ち、議会で「英国はEU離脱を決めた国民投票結果の実現に大きく近づいている」と語っていた。アイルランド政府は既に、11月25日のEU臨時首脳会議(サミット)開催を示唆しており、早ければこの日に合意がまとまる可能性もある。
下院では与党・保守党内のEU離脱派議員が、EUとの関税同盟にとどまる限り、英国は第三国と独自の貿易交渉を行えないとして強く反対している。また、労働党やスコットランド国民党(SNP)も既に反対の姿勢を示し、北アイルランド統一党(DUP)も内容に懸念を示しているもよう。さらに、保守党内のEU残留派の中にも2度目の国民投票を実施するべきとの考えから、暫定合意に反対する動きがある。メイ首相はかねて2度目の国民投票の可能性を一切否定しており、今回の暫定合意が拒否されれば合意がないままEUを離脱する最悪のシナリオになるとして、党内外の残留派を取り込む方針とみられる。[EU規制]
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