欧州連合(EU)のトゥスク大統領は20日、オーストリアのザルツブルクで開かれたEUの非公式首脳会議(サミット)後の記者会見で、ブレグジット後に英・EU間でモノの自由貿易圏を創出するというメイ英首相案は、「EU単一市場を損なうもので、機能しない」との見解を示した。11月に対英交渉の最終妥結に向けた臨時サミットを開催する可能性については、「10月のサミットで十分な進展があれば招集する」と述べ、ブレグジットの合意が成立するかどうかは10月に決まるとしている。
トゥスク氏は、英国を除くEU加盟27カ国は今回、依然として争点となっているアイルランド国境問題が解決しない限り、英国との合意はあり得ないとの点で一致したと説明。また、英国との将来的な貿易関係についても、合意の中でできるだけ明確にする必要があると指摘。ただ、EUは人とモノの移動の自由と単一市場の原則で妥協する準備はなく、メイ首相の方針はこれらを損なうとの認識をあらためて示した。
同氏は、10月18日に始まる定例のEUサミットで、アイルランド問題などを巡る一定の合意が形成されれば、交渉をさらに進め11月に臨時サミットを開催する価値があると説明。10月のサミットは英国との合意が成り立つかどうかが決まる「運命の瞬間となる」と話した。同氏は、今回のサミットの結果、英国との合意成立を「以前よりわずかながら楽観できるようになった」とする一方、合意なしブレグジットの可能性もなお排除できないとしている。
一方、欧州委員会のユンケル委員長はこの記者会見で、「10月までの合意成立に期待するが、欧州委は合意なしのブレグジットへの備えがある」と強調。ドイツのメルケル首相はサミット後に、「EU単一市場を巡る妥協はあり得ないとの点で全加盟国が一致した」とコメント。「10月までに大幅な進展が必要なことが明らかになった」と話した。
これに対しメイ首相は、EUとは今回、合意なしの離脱時にアイルランド国境での厳格な検査を避ける措置が必要との点で一致したとした上で、英領北アイルランドを英国から分断する手法は受け入れられないとあらためて強調。また、貿易については自らの案以外に選択肢はないと繰り返した。その上で、EUとの合意を望むものの、合意なしの離脱にも備えているとしている。[EU規制]
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