メイ内閣は6日、首相の公式別荘「チェッカーズ」で開いた閣議で、関税の在り方を含む欧州連合(EU)離脱後の関係を巡る交渉指針で合意した。3ページにわたる指針は、「モノの自由貿易圏」の創設を提案するなど、EUのルールとの協調を重視する「ソフト・ブレグジット」色の強いものとなった。一方で、ヒトの自由な移動を終わらせる姿勢も明確に打ち出しており、かねてこうした姿勢を「いいとこどり」と批判してきたEU側が受け入れるかは未知数だ。詳細な「白書」は近く公表される見通し。
今回の閣議は、EUとの交渉を前に英政府の立場を統一する目的で、協議は12時間に及んだ。同指針は、「モノの自由貿易圏」を創設する理由として、国境での摩擦を回避し、雇用と生活を守り、北アイルランドとアイルランドに対する英国とEUの「関与」を確保するためと説明。また、食品や水産物、農業製品などを含むモノの実質的なサプライチェーン維持に向け、共通のルールを作成することも盛り込まれた。なお、サービスに関しては別扱いとし、双方が現行水準の市場アクセスを維持することはないと明言した上で、規制には柔軟性を持たせるとしている。さらに、ヒトの自由な移動を終わらせる半面、教育と労働の分野を対象に、英国民とEU市民が双方の領土を容易に往来できるよう「モビリティー枠組み」を新設する案も盛り込まれた。
BBC電子版によると、EU離脱派の閣僚に新提案の詳細が知らされたのは閣議の前日で、ジョンソン外相を含む7人は事前に話し合いを実施。メイ首相は6日の閣議で意見を一致させる「義務」があると強調し、反対者は辞任すべきとの圧力をかけていた。
政府はこれまで、英国・EU間でできるだけ摩擦のない貿易を実現し、アイルランドとの厳格な国境管理を回避するため、英国がEUに代わって関税を徴収する「関税パートナーシップ」案とテクノロジーを利用して通関手続きを最小限にとどめる「最大効率化」案を検討していた。しかし、政府内のEU離脱派が前者を、EU残留派が後者を支持して激しく対立。さらに、EUが英国の暫定案を拒否する姿勢を示したため、メイ首相は第3の選択肢となる新提案を検討していた。
英国のEU離脱期限は2019年3月末だが、離脱法案は英国の上下両院と欧州議会を通過しなければならず、今秋に合意する必要がある。しかし、現時点までに具体的な方向性が示されていないため、インドの自動車大手タタ・モーターズ傘下の英高級車メーカー、ジャガー・ランドローバー(JLR)や欧州航空・防衛最大手エアバス、独高級車BMWなど大手企業がかねて、今後の投資計画に影響するとして苦言を呈している。
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