英下院(定数650)は12日、上院が求めている欧州連合(EU)離脱法案の修正案のうち、EUとの最終合意に対する議会の発言権を強化する修正案を反対324票、賛成298票で否決した。与党・保守党内には造反の動きもあったものの、メイ首相が一定の譲歩を示したことを受け政府の支持に回った。
下院はこの日、15件の修正案のうち12件を審議したが、そのすべてを否決しており、政府はひとまず胸をなでおろす格好となった。
EU離脱法案は、EU法の優位性の終了や現行のEU法を国内法に置き換えることなどを定めるもの。下院は昨年12月、EUとの最終合意に議会の承認を義務付ける修正案を可決していた。その後、上院がさらに15件の修正案を可決。中でも、EUとの最終合意を議会が否決した場合、政府にEUとの再交渉を義務付ける権限を議会に与える修正案が焦点となっていた。政府はかねて議会が最終合意を否決した場合、EUと何の取り決めもなしに離脱する「ハードブレグジット」の道を選ぶ方針だっただけに、この修正案が可決されれば大きな方向転換となる見通しだった。
メイ首相はこの法案を巡る採決の直前、EU残留派の造反議員十数人と協議。離脱交渉でEUとの合意がまとまらなかった場合に議会の発言権を強める案を検討することを個人的に約束した。EU離脱法案は18日に上院に戻されるが、それまでに政府の修正案が公表される見通し。
ただ、政府内のEU離脱派は直ちにこれに反対している。デービスEU離脱相は「われわれは下院が政府の交渉の手を縛ることに同意していないし、同意するつもりもない」とコメントした。メイ首相が十分な譲歩を実現できなければ、残留派から再び突き上げを食らう可能性もある。
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