英政府は7日、欧州連合(EU)離脱後の移行期間内にEUとの関税措置が決まらない場合、2021年末までEU関税同盟に残留する方針を明らかにした。アイルランドと英領北アイルランドの国境での厳格な国境管理を避けるためだが、期限を明確に示すことでEU離脱派の不満を和らげた格好となる。この問題を巡っては、離脱派のデービスEU離脱相が辞任を示唆していた。
政府はこの日に公表した暫定関税措置に関する方針説明書の中で、「この措置は時限的なもので、将来的な関税措置の導入が可能となるまでの期間に限り実施される」とした上で、「英国は将来的な措置が2021年12月末までに導入されると期待している」と明記した。また将来的な措置については、「北アイルランドに関する約束を果たすものであるべき」としている。
英政府はEU離脱後もアイルランドとの国境管理は行わないことを、北アイルランドやEUに約束。一方で、EU離脱後は関税同盟からも離脱する方針も打ち出している。メイ首相は、アイルランド国境での通関手続きを回避するため、英国がEUに代わって関税を徴収する「関税パートナーシップ」案と、テクノロジーを利用して通関手続きを最小限にとどめる「最大効率化」案を検討しているが、政府内で意見がまとまっていない。また先には、北アイルランドを英国とEUの共通地域とする案や、国境沿いに約16キロ幅の貿易緩衝地帯を設けるなど新たな案も浮上するなど、方向性が定まらないのが現状だ。
2019年3月のEU離脱後も、2020年末までは対EU関係の現状を維持する移行期間とされているが、この問題が解決しなかった場合に備え、メイ首相はEU関税同盟に暫定的に残留することを検討していた。ただ、与党・保守党内のEU離脱派は、これが恒久的な関税同盟残留につながるとして明確な期限設定を要求。デービスEU離脱相はこれが聞き入れられなければ辞任する意向と伝えられていた。関税同盟にとどまった場合、英国はEUと税率などを統一する必要があるため、第三国と自由に貿易交渉を行うことができなくなるほか、欧州司法裁判所の管轄下に置かれることになる。
欧州委員会のバルニエ首席交渉官は、英国が暫定関税措置に関する方針を示したことに歓迎の意を表した上で、これがアイルランドでの国境管理回避に向け実効性のある解決策となるかといった基準に基づき、検討を進めるとしている。EUは6月28~29日に開かれるEU首脳会議(サミット)で、この問題の進捗(しんちょく)状況を確認することになっている。
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