欧州議会の外交委員会と国際貿易委員会は15日、英国と欧州連合(EU)が昨年12月に締結した通商・協力協定の批准を推奨した。同協定は現在、暫定適用されているが、4月末に期限を迎える。それまでに欧州議会の本会議で正式に批准されなければ無効となるおそれもあるが、ようやく前進が見られた格好となる。ただ、同委員会は依然、英国がEU離脱協定を順守することが批准の条件としている。
EUと英国は昨年12月24日に同協定を締結。英下院は同月30日にこれを批准したが、欧州議会での批准は完了していなかったため、同月31日に英国のEU離脱後の移行期間が終了した後、暫定発効していた。暫定適用の当初の期限は2月末だったが、EUは欧州議会による批准作業に時間がかかっていることを理由に、これを4月末まで延長することを要請。英国もやむを得ずこれを受け入れていた。
外交委員会と国際貿易委員会はこの日、同協定の批准を推奨する案を賛成108票、反対1票で可決した。ただ、外交委員会のアンドレアス・シーダー欧州議員(オーストリア)は、英国が離脱協定に含まれる「北アイルランド国境問題にかかわる議定書」に違反し続ければ、「これまでの進歩はすべて台無しになる」と警告している。
英領北アイルランドは英国のEU離脱後もEUの単一市場にとどまったため、英本土と北アイルランドの間でやりとりされる物品には一定の通関検査が発生する。一部については3月末まで通関検査を免除する猶予期間が設けられていたが、英政府は混乱が続いていることを理由に、この期間を10月1日まで延長することを一方的に決めていた。
欧州委は、これが北アイルランド議定書の履行の一方的変更に当たるとして、3月に法的手続きを開始。こうした中、欧州議会はこれまで批准推奨の採決を停止していた。この問題を巡っては現在、英国のフロスト内閣府担当相と欧州委のシェフチョビッチ副委員長の間で協議が進められている。
EU政策専門サイトのユーラクティブによると、4月末までに欧州議会が協定を批准せず、EU側が再度の暫定適用延長を求めても英国がこれに応じない可能性がある。通商・協力協定が無効となれば、英国とEUは世界貿易機関(WTO)のルールで貿易を行うことになる。[EU規制]
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