英国と欧州連合(EU)は24日、英国と英領北アイルランドの間でやり取りされる物品の通関検査の免除期間を延長する可能性について協議したが、進展は見られなかった。一部の分野では3月に免除期間が終了するため、英小売業界などからは延長を求める声が強まっているが、EUはこれを拒否している。
英国は2020年12月31日に欧州連合(EU)離脱後の移行期間が終了し、EUの単一市場と関税同盟から離脱した。しかし、EU離脱協定に含まれる「北アイルランド国境問題にかかわる議定書」では、アイルランドと北アイルランドの間の国境検査を避けるため、北アイルランドが単一市場にとどめられた。
この結果、英国と北アイルランドの間の物品のやり取りには安全性検査など一定の通関検査が必要となった。現在は移行措置として免除されているが、一部の分野では3月末に免除期間が終了するため、スーパーマーケットなどから延長を求める声が上がっている。英政府はこれを受け、EUに適用免除期間の2年間延長を正式に要望したものの、EUは拒否していた。
この日の協議は、英国のゴーブ内閣府担当相と欧州委員会のシェフショビッチ副委員長の間で行われた。シェフショビッチ氏は協議後の記者会見で「すべてを解決できるわけではなく、ブレグジットの結末には避けられないものもある」と指摘。「EU法には従うしかないし、締結した協定は守る必要がある」と主張した。
北アイルランド議定書を巡っては、英領北アイルランドの親英強硬派、民主統一党(DUP)が北アイルランドの自治政府や住民の同意を得ていないとし、英政府を提訴する方針を示している。同党を率いる北アイルランドのフォスター首相は、免除期間を延長しても「応急措置にしかならない」と訴え、同議定書の撤回を求めている。
なお、EUとの協議は今後、英国の対EU交渉担当を務めたデービッド・フロスト氏が引き継ぐ。同氏は3月1日付で対EU関係の担当相として入閣し、対EU通商協定の管理を手掛ける「共同パートナーシップ評議会(JPC)」の英国側の代表に就任する予定。同氏はゴーブ氏よりも対EU強硬姿勢を強めるとの見方もある。[EU規制]
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