欧州委員会は1日、欧州連合(EU)離脱協定の一部をほごにする英国の国内市場法案を巡り、法的措置を開始したと発表した。EUはかねて、同法案の離脱協定に反する部分を9月末までに撤回するよう英政府に要求していたが、この期限が守られなかったため。同国に対し、向こう1カ月以内に書簡に返答するよう求めている。
欧州委のフォンデアライエン委員長は「離脱協定に定められた誠実義務に違反する」と主張。「現在までに問題の条項が撤回されなかったため、欧州委は英政府に正式な告知書を送付することを決定し、これは法的手続きの最初のステップとなる」と説明した。
英国は10月末までにこれに返答する必要がある。欧州委は、返答がない場合や返答内容によっては「適切な選択肢」を取るとしており、欧州司法裁判所で争う可能性もあるという。
国内市場法案は、EU離脱後の移行期間の終了後に国内各地域間で円滑な通商を維持することが本来の目的。ただ、離脱協定で定められた北アイルランドに関する議定書の一部を英政府の一存で無効にできる条項が含まれ、英領北アイルランドと英本土の間での新たな通関検査や、英・EU間で貿易協定がまとまらなかった場合のモノの移動に関するルール、国家補助に関する取り決めを英政府が一方的に拒否できる内容となっている。このため国際法に反するとの批判もある。
英下院(定数650)は9月29日、国内市場法案を340対256の賛成多数で可決。北アイルランドの親英強硬派、民主統一党(DUP)を除く野党各党をはじめ、与党・保守党内でもメイ前首相や閣僚経験者を含む議員が、英国の国際的な信用を傷つけるとして反対していた。下院の承認を政府に義務付ける修正が施されたこともあり、今回の採決では保守党からの造反はなかったものの、同党議員20人超が投票を見合わせた。
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