欧州委員会は7日発表した秋季経済見通しの中で、今年のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)が前年比1.1%拡大するとの見方を示した。前回7月時点の夏季予測から0.1ポイント下方修正。世界的な貿易摩擦や地政学的緊張、英国の欧州連合(EU)離脱の不透明感などが背景にある。
欧州委は、欧州経済は第2四半期(4~6月)に減速しており、近い将来に持ち直す可能性は低いと分析。労働市場は依然として力強く、失業率も金融危機以前の水準まで下がっており、これが賃金上昇とそれに伴う内需の拡大につながったと指摘する。また、GDP成長率は加盟各国いずれもプラスとなるものの、将来の英国とEUの関係を含む通商政策における不透明感や、乗用車業界における消費者嗜好の変化などが、ユーロ圏の成長率とインフレ率の押し下げ要因になるとみる。
来年の成長率見通しは1.2%と、こちらは前回から0.3ポイント引き下げた。英国を除くEU加盟27カ国のGDPは、2019年と2020年でいずれも1.4%とみており、2020年については前回予想から0.3ポイント下方修正している。EU28カ国でも今年と来年は同じく1.4%を予測。2020年については7月時点の見通しから0.2ポイント下げている。
ユーロ圏のインフレ率については、今年も来年も1.2%にとどまると予想。夏季予測からそれぞれ0.1ポイント引き下げた。EU28カ国では、2019年と2020年でいずれも1.5%になるとみる。
今年のGDP成長率予測を国別に見ると、ドイツは0.4%と夏季見通しから0.1ポイント引き下げた。フランスは前回と同じ1.3%。イタリアは0.1%とこちらも夏季時点の予想を据え置いたが、スペインは1.9%と0.2ポイント引き下げている。オランダは1.7%で、0.1ポイント上方修正。ユーロ圏外の英国は1.3%と、前回から変わっていない。来年は1.4%と0.1ポイント引き上げている。
欧州委は、欧州経済は予測対象の2021年まで続くとみられる通商政策やその他の経済政策により、不透明感が極めて高い時期に差し掛かっているとコメント。不透明感がさらに高まった場合、現時点の予測より結果が悪化する可能性もあるとし、極めて大きな下振れリスクが依然としてあると指摘した。また、現時点の見通しは英国とEUの貿易関係が現状維持するとの想定の下に成り立っており、ここから多少なりとも逸脱した場合は、特に英国で経済成長の妨げとなると警鐘を鳴らしている。加えて、もう一つの下振れリスクとして、製造業界におけるリセッション(景気後退)が、サービス業界に悪影響を及ぼし、消費者信頼感や雇用創出、内需、成長見通しなどに響く可能性にも言及した。[EU規制]
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