欧州委員会は7日発表した春季経済見通しの中で、今年のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)が前年比1.2%拡大するとの見方を示した。前回2月時点の冬季予測から0.1ポイント下方修正している。貿易摩擦や世界経済の伸び悩み、製造業の予想以上の不振に加え、自動車産業の混乱や社会的な緊張の高まり、ブレグジットを巡る不透明感を押し下げ要因としている。
来年の成長率見通しは1.5%と、こちらも前回から0.1ポイント引き下げた。英国を除く欧州連合(EU)加盟27カ国のGDP成長率は、2019年は1.4%と0.1ポイント引き下げる一方、2020年は前回の予測と同じ1.7%とした。
今年の成長率予測を国別に見ると、ドイツは0.5%と冬季見通しから0.6ポイント引き下げた。フランスは前回と同じ1.3%。イタリアは前回の0.2%からさらに0.1%に引き下げた。スペインは2.1%で据え置き。オランダは0.1%下方修正し、1.6%とした。
ユーロ圏外の英国は今年と来年が共に1.3%と、いずれも前回の予測と同じ。ただしこれは、同国のEU離脱後もEU域内との貿易条件で現状が維持されるとの仮定に基づく。
欧州委は、冬季予測でユーロ圏の今年のGDP成長率見通しを0.6ポイント引き下げていたが、今回さらにこれを下方修正した格好となる。同委は今回の予測についても、下振れリスクが大きいと指摘。世界的な保護貿易主義の高まりや、中国をはじめとする世界各国の経済・貿易不振の長期化に加え、域内でも英国の合意なき欧州連合(EU)離脱や、製造業不振の長期化、政治的な不透明感や成長を重視しない政策による民間投資の低下がリスク要因になるとみている。
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