国際通貨基金(IMF)は9日に発表した世界経済見通しで、ユーロ圏19カ国の今年の域内総生産(GDP)が前年比1.3%拡大するとの見方を示した。前回1月時点の予測から0.3ポイント下方修正した形。英国の成長率見通しも0.3ポイント引き下げ、1.2%とした。英国の合意なき欧州連合(EU)離脱の可能性やイタリアの財政問題などをリスク要因に挙げている。
IMFはユーロ圏経済について、成長の勢いは予想以上に弱まったと指摘。背景には、消費者信頼感と企業景況感の低下、新たな排ガス規制基準の導入に伴うドイツの乗用車生産への影響、イタリアでの投資縮小、アジアの新興国を中心に外需が減ったことがある。2020年については1.5%とし、従来見通しから0.2ポイント引き下げた。
ユーロ圏主要国の今年の成長率予測を見ると、ドイツは前回から0.5ポイント引き下げ0.8%とした。フランスは1.3%と0.2ポイント下方修正。昨年第4四半期(10~12月)にリセッション(景気後退)入りしたイタリアは0.5ポイント引き下げ、0.1%と予想する。スペインは2.1%で、0.1ポイント下げている。
英国の2020年の成長率見通しは、1.4%と0.2ポイント下方修正。IMFは今回、合意なき離脱に至った場合の経済への影響を予測。離脱後に両地域間での通商に混乱が生じた場合、英国のGDPは1年目と2年目にそれぞれ1.4%、0.8%、EU側は0.2%、0.1%押し下げられると見込む。貿易がスムーズに行われた場合でも、2021年までに英経済を3.5%押し下げ、EU側は0.5%のマイナス影響を受けるとしている。
ロシア経済は2017年にリセッションから脱却。今年は1.6%と2018年の2.3%から減速し、2020年も1.7%の伸びにとどまると予測する。
世界経済の今年の成長率見通しは3.3%と、1月時点の予測から0.2ポイント下方修正。来年は3.6%に据え置いた。IMFは、貿易摩擦がもし早急に解消され、企業景況感が回復して投資家の信頼感が拡大した場合、世界経済が好調に伸びる可能性もあるが、リスクバランスは依然として下振れ傾向にあると説明。貿易摩擦や政治的不透明感の高まりはさらなる成長低迷につながるとした上で、ブレグジットや長期的な世界経済の減速、イタリアの財政的不透明感とユーロ圏諸国への影響などに警鐘を鳴らしている。
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