金融情報サービス会社IHSマークイットは1日、2月のユーロ圏製造業PMI(購買担当者景気指数、確定値)が49.3ポイントになったと発表した。速報値から0.1ポイント上向いたものの、前月からは1.2ポイント低下。景気の「改善」と「悪化」の境目である50ポイントを2013年6月以降で初めて下回った。
調査対象の8カ国のうち、スペインは49.9ポイントと過去63カ月で最低を記録。こちらは2013年11月以降で初めて分岐点を下回った。イタリアは47.7ポイントと5カ月連続で悪化圏にとどまり、過去69カ月で最も低い。オーストリアは51.8ポイント、オランダは52.7ポイントにいずれも低下し、それぞれ過去37カ月、過去32カ月で最も減速している。一方、アイルランドは54ポイントに上昇。ギリシャも54.2ポイントと、過去9カ月で最高に達した。
ユーロ圏経済をけん引するドイツは47.6ポイント。速報値から変化がなく、1月からは2.1ポイント低下。2012年12月以降で最も沈んでいる。新規受注は、自動車の販売低迷や中国を含むアジアからの需要減、英国の欧州連合(EU)離脱に伴う先行き不透明感などにより輸出向けが2012年10月以降で最も落ち込んだ。生産高は過去6年近くで初めて減少した一方、雇用ペースは1月の堅調な水準を維持している。
フランスは51.5ポイントで速報値から0.1ポイント上方修正された。前月からは0.3ポイント上昇し、過去5カ月で最高を記録。生産高はやや上昇したものの、長期平均を下回っている。新規受注は、自動車産業からの需要が落ち込んだことで輸出向けが6カ月連続で減少したが、国内受注が好調で、全体では過去4カ月で初めて増加に転じた。雇用ペースはやや減速したものの、依然として堅調に増加している。
ユーロ圏製造業PMIのサブ指数を見ると、輸出向けの新規受注は、政治的要因や貿易を巡る先行き不透明感から5カ月連続で減少し、落ち込み幅は過去6年超で最大。生産高もこれに伴い縮小した。一方、雇用はドイツやギリシャ、アイルランドが押し上げ、2014年9月以降は堅調にペースを保っている。仕入れ価格は、石油製品などの価格下落や供給サイドの制限解除などから伸びが2016年10月以来で最も縮小。出荷価格も2016年末以降で最も減速した。
IHSマークイットのクリス・ウィリアムソン首席ビジネス・エコノミストは今回の結果について、「今後の見通しとなる指標が、春に向けてリスクがさらに深まる傾向を示している」と指摘。米国の関税引き上げを発端として世界に拡大した貿易戦争や、世界経済への見通しを巡る懸念に加え、回答企業からはブレグジットなどの政治的先行き不透明感の高まりが需要に打撃を与えるほか、リスク回避への行動を加速させているとの声が上がった。
■英は依然として低迷
IHSマークイットによると、2月の英国の製造業PMIは52ポイント。1月から0.6ポイント低下し、2016年7月以降で2番目に低い水準を記録した。ただ、分岐点の50ポイントは31カ月連続で超えている。ブレグジットに備え、企業が原材料などの新規購入と備蓄を引き続き増やしたことや、受注残高を減らしたことにより生産高はやや拡大した。半面、新規受注は国内需要の弱まりや、輸出向けの落ち込み幅が加速したことで、停滞傾向にある。
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