金融情報サービス会社IHSマークイットは5日、1月のユーロ圏総合PMI(購買担当者景気指数、確定値)が51ポイントとなったと発表した。速報値から0.3ポイント上方修正されたものの、2018年12月からは0.1ポイント低下。景気の「改善」と「悪化」の境目である50ポイントは67カ月連続で超えたが、過去5年半で最低を記録した。
調査対象5カ国のうち、ドイツは52.1ポイントと速報値から変化がなく、前月からは0.5ポイント上昇。フランスは48.2ポイントで速報値から0.3ポイント上がったが、前月からは0.5ポイント下落し、引き続き分岐点を下回った。アイルランドは53.3ポイントと過去67カ月で最低を記録。イタリアは48.8ポイントと悪化圏にとどまり、過去62カ月で最も低い。一方、スペインは54.5ポイントと、過去7カ月で最高に達した。
ユーロ圏総合指数の新規受注は、2013年4月以降で最も落ち込んだ。半面、雇用は堅調に増加し、2014年11月から続く成長基調を維持した。仕入れ価格は、人件費上昇が影響しサービス業部門で著しく値上がりしたものの、製造業部門では燃料価格の下落などで伸びが減速し、全体では上昇幅が過去1年半近くで最も縮小した。一方、出荷価格の伸びは過去3カ月で最も加速した。事業見通しは過去3カ月で最も改善したものの、英国の欧州連合(EU)離脱や貿易摩擦などに起因する懸念を背景に、過去4年で最も低い部類にとどまっている。
■サービス業は仏で不振続く
ユーロ圏のサービス業PMIは51.2ポイント。速報値から0.4ポイント上方修正されたものの、前月からは横ばいだった。国別では、ドイツが53ポイントと1.2ポイント上昇し、4カ月ぶりに上向いたものの、過去8カ月で2番目に低い水準となっている。新規受注は、国内で増えた半面、輸出向けが減少し、わずかな伸びにとどまった。雇用ペースは4カ月連続で緩和し、昨年5月以降の最低水準にとどまった。向こう12カ月の事業見通しはわずかに改善している。
フランスは47.8ポイントと前月から1.2ポイント下落し、落ち込み幅は過去5年近く最も加速。2カ月連続で悪化圏にとどまった。新規受注は、「黄色いベスト」運動と呼ばれる反政府デモなどの影響で、輸出向け受注が特に不振だった。雇用の勢いは過去2年で最も弱まっている。スペインは54.7ポイントと前月から0.7ポイント上昇した。イタリアは49.7ポイントで0.8ポイント下がり、分岐点を下回った。
IHSマークイットのクリス・ウィリアムソン首席ビジネス・エコノミストは、ユーロ圏経済はほぼ停滞した状態で2019年をスタートしたと指摘。第1四半期(1~3月)の域内総生産(GDP)成長率は0.1%にとどまり、四半期ベースでは2013年以降で最低になるとの見方を示した。また、今年のGDP成長率が、現在の予測値である1.5%から下方修正される可能性があると分析した。
■英は過去2年半で最低
IHSマークイットによると、1月の英国サービス業PMIは50.1ポイントとなり、前月から1.1ポイント低下。過去2年半で最低を記録した。企業の間ではブレグジットを巡る先行き不透明感の高まりなどが需要を低下させ、新プロジェクトへの意思決定に遅れを生じさせていると指摘する声もある。事業見通しは、過去29カ月で最も低下した昨年12月からはわずかに回復したものの、2009年初め以降で最低の部類にとどまっている。
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