欧州司法裁判所のサンチェス法務官は4日、英国は欧州連合(EU)のリスボン条約第50条に基づくEU離脱通告を一方的に撤回できるとの判断を下した。英国とEUの間で離脱協定が正式に締結されるまでは、他のEU加盟27カ国の承認なしに取りやめることが可能としている。英政府は、第50条に基づきEU離脱を通告したからには後戻りはできないと主張していたが、これを覆す見解が示された格好。2度目の国民投票を求める英国のEU残留派が勢いづくことは必至だ。
この判断は、スコットランドおよびイングランドの議員を中心とするEU残留派が、離脱通告の撤回に関する第50条の解釈を巡り、英政府を相手取って起こした裁判に関するもので、スコットランドの裁判所が欧州司法裁に判断を付託していた。欧州司法裁は近く、法務官の見解を参考に正式な判決を下す。法務官の判断に拘束力はないが、欧州司法裁はこれに沿った判決を下すことが多い。
サンチェス法務官は今回、「第50条は、EU離脱の意思通知を一方的に撤回することを可能としている」と明言。さらに、「離脱協定が正式に締結されるまではこの可能性が続く」との判断を示した。
原告団を代表する弁護士のジョリオン・モーム氏はこの判断について、「英国の未来に関する決定を選挙で選ばれた議員の手に取り戻すもの」と歓迎。一方、政府広報官は「第50条を撤回しないという政府方針に変わりはない」とコメントした。また、英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージュ元党首は「英国海峡の両岸で、ブレグジット阻止を狙う取り組みが行われている」と批判している。
ただ、ブレグジットの中止が法的に可能となれば、EU離脱強硬派が危機感を感じてメイ首相の離脱案を支持する可能性もある。そうなれば、12月11日に予定される英下院での投票で、離脱案が承認される可能性が高まることになり、今回の判断がどのような影響を及ぼすかはなお流動的だ。[EU規制]
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