欧州委員会は8日発表した秋季経済見通しの中で、今年のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)が前年比2.1%拡大するとの見方を示した。前回7月時点の夏季予測から変わっていない。同委は、ユーロ圏経済は減速傾向にあるものの、国内消費と投資に支えられ来年も拡大を続けると予想。ただ、相互関連性のある下降リスクが数多くあり、どれか1つでも現実になれば経済に多大な影響を及ぼすと警告している。
来年の成長率見通しは1.9%と、こちらは前回から0.1ポイント引き下げた。英国を除くEU加盟27カ国のGDPは、2018年は2.2%増と0.1ポイント引き下げ、2019年も0.1ポイント下方修正して2%とした。
今年の成長率予測を国別に見ると、ドイツは1.7%と夏季見通しから0.2ポイント引き下げた。フランスは前回と同じ1.7%。イタリアは1.1%、スペインは2.6%と、共に0.2ポイント引き下げている。オランダは2.8%と、前回の予測を維持した。ユーロ圏外の英国は1.3%と、前回から変わっていない。来年についても前回と同じ1.2%とし、イタリアと並び全加盟国の中で最低水準にとどまるとみる。
欧州委は下振れリスクとして、米経済の過熱による早期の利下げと、それが新興市場に打撃を与える可能性や、米中間の貿易摩擦の高まりによる中国経済の混乱といった外的要因に加え、一部のEU加盟国の債務問題が金融分野に派生する危険性や、英国のEU離脱に関わるリスクを挙げている。
なお、先に財政赤字を拡大する来年度予算案を欧州委に提出し、是正を求められているイタリアは、今年のGDP成長率見通しが1.1%に引き下げられたことにより、財政赤字の対GDP比が1.9%と、同国の予想する1.8%を上回る見通しとなった。欧州委はこれが来年は2.9%、2020年は3.1%に達し、EUが基準とする3%を超えると予想。欧州委の予測は、2019年と2020年の財政赤字がそれぞれ2.4%、2.1%とするイタリア政府の見積もりとは大きくかけ離れており、同委がイタリア政府に是正をさらに強く求める可能性が高まっている。[EU規制]
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。