東芝は8日開いた取締役会で、英イングランド北西部セラフィールド近郊ムーアサイド(Mooreside)での新規原発建設プロジェクトから撤退することを決めたと発表した。事業会社ニュージェネレーション(NuGeneration、ニュージェン)は解散する。経営再建に向け非中核事業から撤退する計画の一環。ニュージェン売却の見通しが立たない中、同社の維持コストを削減するためには解散が妥当と判断した。この新原発により国内電力需要の7%を賄うことを目指していた英政府にとっては痛手となる。
東芝はこの日、向こう5カ年の経営再建計画を併せて発表。その中で、収益力の強化に向け海外での新規原発事業などの非注力事業からの撤退を打ち出している。ニュージェン解散の手続きは来年1月末までに開始する予定。同社はこれに伴い、今年度に約150億円の税引き前損失を計上する見込み。
東芝はかねて、このプロジェクトから撤退する方針で、ニュージェンの引き受け先を探していた。昨年12月には韓国電力公社(KEPCO)を優先交渉先に選んだものの、交渉はまとまらなかった。ニュージェンには当初、東芝が60%、仏公益事業大手エンジー(Engie、旧GDFスエズ)が40%を出資していたが、原子炉を納入する予定だった東芝の米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリックが破綻したことを受け、東芝がエンジーの保有株を買い取った経緯がある。
ある政府高官はフィナンシャルタイムズに対し、他社がこの事業を引き継ぐ可能性も捨てきれないものの「楽観はしていない」とコメントしている。政府はかねて、同プロジェクトを支援する可能性を示唆していたが、実現していない。業界内には、政府がブレグジットに注力する中、支援の具体化に至らなかったとの見方もある。なお政府はかねて、日立製作所がウェールズで進めるウィルファ・ネーウィズ(Wylfa Newydd)新規原発プロジェクトについても、直接出資を含めた支援を検討するとしているが、正式な発表は行われていない。[環境ニュース][M&A][日本企業の動向]
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