欧州委員会のユンケル委員長は12日、欧州議会で施政方針の演説を行った。欧州連合(EU)域外との国境警備の強化やアフリカとの新たな協定を提案したほか、単一通貨ユーロの国際的な地位強化に向けた施策についても言及。英国のEU離脱については、単一市場の一部にのみとどまることはできないとくぎを刺した一方、メイ首相が提案する自由貿易圏構想は新たな関係性の出発点になると評価している。
欧州委員会は来年5月の欧州議会選挙に伴い、全委員が交代するため、ユンケル委員長にとって今回は最後の施政方針演説となる。その中で同委員長は、先にトランプ米大統領と関税を巡る合意に達したことをアピールし、EUは団結することにより国際的な発言力を強められると強調。世界で保護貿易主義が高まる中、今後もEUは多国間主義を擁護し続けるべきとした。日本とEUの経済連携協定(EPA)については、欧州議会選までに批准が完了するとの見方を示している。
ユンケル委員長は、EU域外との国境警備の強化に向け、2020年までに欧州対外国境管理協力庁(FRONTEX)の人員を1万人増やす方針を示した。ただ、EUはスキルのある移民を必要としており、今後も移民・難民に門戸を開き続けるべきとの考えを示している。
また、アフリカを援助対象国ではなく経済パートナーと見なすべきとし、持続可能な投資と雇用に向けたEU・アフリカ間新協定を提案した。これにより、向こう5年にアフリカで1,000万人の雇用を創出できると見込む。また、EUの人材育成・交流プログラム「エラスムス計画」を通じて、2020年までに3万5,000人、2027年までに10万5,000人の学生・研究者を支援するとしている。
財政面では、単一通貨ユーロの国際的な地位の強化に向け、年内に複数の施策を提案する方針。また、これに向け経済・通貨同盟の完了を急ぐ必要があると訴えた。さらに、税制や一部の外交政策について加盟国の拒否権を廃止し、全会一致でなくても決定できるようにする方針も示した。
このほか、加盟各国に夏時間の設定を義務付けたEU法を改正し、加盟国レベルで必要性を判断できるようにするとしている。
英国のEU離脱については、「EUを離脱すれば単一市場の一部ではなくなり、任意の一部分だけ単一市場にとどまることはできない」とあらためて強調。アイルランドとの国境問題では、常にアイルランドと連帯し、英領北アイルランドとの間で国境管理を行う必要のない解決策を望むと話した。ただ、英国は離脱後も単なる第三国ではなく、政治、経済、安全保障上のパートナーと強調。メイ首相の提案する英・EU間の自由貿易圏構想は、パートナーシップへの出発点になるとしている。[EU規制]
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