欧州連合(EU)と英国は19日、英国のEU離脱に向けた離脱条約案の大部分で合意したと発表した。このうち、ブレグジット後の制度激変を避けるための移行期間については、2020年12月末までとし、この間に英国入りしたEU市民には、離脱前に到着したEU市民と同様の労働権や居住権を与えることで合意している。ただ、アイルランドと英領北アイルランドの間の国境問題など一部の懸案事項については、さらなる協議が必要としている。
英国は当初、移行期間を2019年3月のEU離脱から2年程度とすることや、この間に英国入りしたEU移民の権利を制限することを求めていたが、最終的にEU案を受け入れた格好となる。移行期間についてはこのほか、この間は英国に引き続きEU法が適用されることで合意。英国は移行期間終了までEU単一市場や関税同盟にとどまることになる。英国はこの間、新たなEU規則の策定過程には参加できない。ただ、EUは最終案について英国の意見を問うことを受け入れた。また、英国は移行期間中に第3国と通商交渉を行ったり通商協定を結び、移行期間の終了とともにこうした協定を発効させることができる。
欧州委員会のバルニエ首席交渉官は今回の合意について、英国が何の取り決めもなしにEUを離脱するハードブレグジットを避ける上で「決定的な一歩」とした上で、「これは最終目的地ではなく、まだ多くの仕事が残されている」と話した。また、英国のデービスEU離脱相は、移行期間やEU市民の権利を巡る合意がまとまったことで「企業や市民に確かな見通しが与えられる」としている。
ただ、アイルランドと英領北アイルランドの国境については、検問所の設置を避ける措置が見いだせない場合には北アイルランドはEU単一市場および関税同盟にとどまるとしたEUの「窮余の策」を英国が拒否したため、さらなる協議が必要となっている。メイ首相はかねて、北アイルランドを英国から切り離すこうした手法は受け入れられないとの姿勢を示している。ただ、英国側も厳格な国境管理を避けるための何らかの「窮余の策」が必要という点は受け入れている。
残された懸案事項としてはほかに、離脱条約を巡る紛争解決や執行の最終権限を欧州司法裁判所に与えるかの問題がある。英国はかねてこれに抵抗を示している。EUと英国はこれらの懸案事項でも合意に達し、来年3月29日の正式な離脱日までに双方の議会で離脱条約が批准されることを期待している。
EUの英国を除く加盟27カ国は間もなく行われる首脳会議(EUサミット)で、離脱条約を巡る交渉の進展を認めるとともに、トゥスク欧州理事会議長(EU大統領)が先に提示した、ブレグジット後の対英関係の枠組みに関するガイドライン案を採択する見通し。そうなれば、EUと英国はようやく将来の通商関係に関する協議を開始できることになる。
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