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ドイツ経済、復活なるか 主要7政党の公約まとめ

23日のドイツ連邦議会(下院)選挙まで1週間を切った。今回は29政党が参加しているが、うち改選前の議会で議席を持つ、主要7政党の経済政策のポイントをまとめる。

与党・社会民主党(SPD)は、電気料金の引き下げを公約。「メード・イン・ジャーマニー・ボーナス」と銘打つ新たな企業向け投資促進策も打ち出した。企業の設備投資に対し、投資額の10%を税還付の形で資金提供するもので、年間最大180億ユーロを用意する。申請プロセスを簡素なものにすることも約束した。電気自動車(EV)の普及促進のため、EVの自動車税を2035年まで免除することや、国内の雇用維持に、積極的に取り組む方針も示した。食料品に対する付加価値税(VAT)率を現在の7%から5%に引き下げ、最低時給を15ユーロに引き上げることも盛り込んだ。

政党支持率トップで、政権奪還が濃厚なキリスト教民主同盟(CDU)・キリスト教社会同盟(CSU)連合も、安価な電気の確保に取り組む方針で、公約には電力税を引き下げると明記。原子力発電への回帰も選択肢の一つとする。企業支援策としては、法人税の最高税率を25%に抑えることを提案。旧東独地域の経済開発支援に充てている「連帯税」は廃止する方針だ。飲食店の付加価値税を、19%から7%に引き下げることも主張する。サプライヤーが人権尊重や環境保護に取り組んでいることの確認を義務付ける「サプライチェーン法」は行政の効率化の観点から、廃止する。

SPDと連立を組む緑の党は、持続可能で環境に優しい経済の推進に重点を置く。 エネルギー価格を安くするため、税負担を軽減し、自家発電のハードルも下げる。企業投資は補助金で促進する方針で、建物以外の投資には、投資額の10%を、納める税金から控除する。税金額を上回る場合は、その分を支給する。熟練労働者不足の改善に向けては、新たに「デジタル移民局」を設立し、就労ビザのデジタル申請で手続きをスピードアップし、国際的な人材獲得競争に打ち勝ちたい考えだ。

SPD、緑の党と共に3党連立の一角を占めていた自由民主党(FDP)は、「経済の立て直し」を中心テーマに据える。「スリムな国家」を主張し、補助金を削減し、国有資産の売却を進める考えだ。所得税と法人税を下げ、連帯税を廃止することで投資増加も狙う。エネルギー政策では、電力税などを引き下げることで電気価格を安くすると主張。原発再稼働に前向きで、現在禁止されているフラッキング(水圧破砕法)によるガス採掘を進める方針も示した。

政党支持率調査で2位につけている極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は、各種税金の引き下げに取り組む方針で、炭素税の廃止にも踏み込んでいる。安価なエネルギーを確保するため、原発を再稼働し、ロシアからのガス輸入再開を主張する。化石燃料からの脱却を明確に否定している。欧州連合(EU)は計画経済的だと批判し、EUと統一通貨ユーロからの離脱を主張している。

ドイツ社会の右傾化懸念を背景に、年初から過去にないペースで党員数を伸ばしている左派党は、国家は経済運営において重要な役割を果たすべきだと主張し、経済やインフラを立て直すために、国家が明確な計画を立てるべきだと訴える。輸出よりも国内市場に重点を置くことを主張している。産業再編には2,000億ユーロを投資する方針で、エネルギー集約型産業には、特別な電気料金の導入を目指す。富裕層への課税強化や、家賃の上限設定、最低時給の15ユーロへの引き上げ、基本的な食料品や衛生用品、公共交通機関の運賃に対する付加価値税の撤廃も盛り込んだ。

左派党から分裂し、初の連邦議会選に臨む左派ポピュリズム政党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」は、内燃エンジン(ICE)車の廃止に否定的な立場を取る。最低時給を15ユーロに引き上げるほか、家賃が高騰している地域では、30年まで、さらなる家賃引き上げを禁止する。ロシアに対する制裁を解除し、安価なガスの調達を可能にすると主張している。基本的な食品への付加価値税やトラックの通行料金のほか、炭素税を廃止することも宣言している。キャピタルゲイン課税を強化する方針も打ち出している。


関連国・地域: ドイツ
関連業種: 政治

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