ドイツ政府は5日、年内に停止を予定している原子力発電所3基のうち、2基の稼働を2023年4月半ばまで続ける方針を明らかにした。ロシアからのガス供給が減る中、冬季の暖房需要に備え待機状態を保つとしている。
政府は11年、福島第1原発事故を受けて国内全17カ所の原発を22年末までに閉鎖することを決定し、代替エネルギーとして再生可能エネルギーの拡大を推進してきた。現在も稼働を続けている原発は3基のみで、国内の発電量に占める比率は約6%にとどまる。
ハーベック副首相兼経済・気候保護相はこの日、このうち南部バイエルン州の「イザール2」と南部バーデンビュルテンベルク州の「ネッカーベストハイム2」の2基を電力が不足した場合の予備電源として待機させる考えを示した。残りの1基は予定通り年内に停止する。
同相は「ドイツは十分な電力を確保している」とした上で、欧州全体がエネルギー危機に直面する中、フランスの原発の半数が停止していることや、干ばつによるライン川の燃料輸送の混乱および近隣諸国の水力発電量減少、国内の再生可能エネルギー開発の遅延といったリスク要因があると説明。「最悪のシナリオの可能性は極めて低いものの、エネルギー安全保障に向けた万全の対策の1つとして、原発停止の遅延を決めた」としている。
ドイツ政府は既に、ロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギー不足に備え、石炭火力発電を拡大する計画を打ち出している。原発の稼働延長は当初は否定していたが、ショルツ首相は8月、バイエルン州など一部地域で再生可能エネルギー開発が十分に進んでいないことなどを理由に、原発停止を先延ばしする可能性を示唆していた。[環境ニュース]
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