ドイツ政府は5日、経営難に陥ったエネルギー企業の救済に向けた法案を閣議決定した。ロシアからのガス供給減により経営が悪化しているエネルギー大手ユニパー(Uniper)が最初の救済対象となる見通し。
法案は、エネルギー安全保障法やエネルギー産業法などを改正するもの。これにより、政府が出資を含めた救済案を提示することが容易になる。またエネルギー企業は、ガスの供給減による追加コストを顧客に転嫁することが可能となる。
ハーベック副首相兼経済・気候保護相は、「ガス市場の状況は厳しく、さらに悪化する可能性も否定できない」と指摘。その上で、「価格が高騰しリスクが拡大する中で、この冬に基本的供給を維持し、エネルギー市場をできるだけ長く存続させられるよう手を尽くす」と話している。
ロイター通信によると、同法案は8日に連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)で可決される見通し。
ロシア産ガスの最大の輸入業者であるユニパー(Uniper)は6月末、政府から救済を受ける方向で交渉を進めていると発表。融資保証を受けることや、ドイツ復興金融公庫(KfW)による融資枠の拡大に加え、政府からの出資の可能性を検討しているとしていた。この法案が可決されれば、政府はこれに基づき同社の救済に乗り出すとみられている。
ロシアの天然ガス世界最大手ガスプロムは6月中旬以降、ガスパイプライン「ノルドストリーム1」経由でのガスの供給量を約60%削減している。ガスの輸入業者は不足分をスポット市場で購入せざるを得ず、調達コストが膨らんでいるが、顧客の多くには長期契約に基づく価格で販売しているため、追加コストの負担で業績が圧迫されている。
ノルドストリーム1は7月11日から定期メンテナンスのため停止される。ドイツ政府は、ロシアがこれを機に供給を打ち切る恐れがあると懸念しており、この日までにエネルギー企業救済の体制を整えることを目指している。
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