英政府は2日、地域の経済格差是正に向けた計画を発表した。国内の各地域に資金と権限を移すため、各地域が希望すれば権限を中央から委譲するほか、教育や公共交通、住宅、ブロードバンドなど2030年までに達成する12項目の目標を打ち出した。政府はこれを「レベルアップ・再生法案」にまとめ、法律で規定することにしている。
地域の経済格差是正は、19年の総選挙で与党・保守党が公約に掲げていた。発表された12項目の目標は各政策を「国家的使命」としてまとめたもので、目標を定量化して進捗(しんちょく)状況も測定する。これには、◇希望すればロンドンやマンチェスターのように市長を公選で選出し権限を委譲すること◇教育支出を貧困地域に集中させて非識字者や無学者をなくすこと◇イングランド南東部以外で公共の研究開発(R&D)投資を40%拡大◇質の高い技能訓練修了者数の増大◇国内の公共交通機関をロンドンの水準に大幅に近づけること◇30年までに国土の大半で第5世代(5G)移動通信のモバイルデータを利用できること◇住宅購入者の増大と劣悪な賃貸住宅の50%削減◇健康寿命の地域格差の縮小――などを挙げている。
都市にある廃墟などについては、20都市を明示して質の高い雇用を創出するための再開発の対象とした。最初の候補として、イングランド中部のシェフィールドとウルバーハンプトンを選んでいる。また、住宅に対する政府支出の80%をロンドンとイングランド南東部に集中させる規定を撤廃し、イングランドの北部や中部への配分を増やす。
こうした計画には、すでに資金も割り当てている既存の施策が多いが、ゴーブ・レベリングアップ・住宅・コミュニティー相は「この戦略は新たな資金を提供することが目的ではなく、資金が地域の優先事項に効果的に使われることを保証するもの」と説明している。また、施策の大半はイングランドのみが対象となるが、政府はスコットランドやウェールズ、北アイルランドの各政府と協力して英国全体で取り組む方針を示した。
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