英国のジョンソン首相は7日、イングランドの介護制度と国民医療制度(NHS)の拡充に向け、2022年4月から国民保険料を1.25%引き上げると発表した。向こう3年に360億ポンドを調達し、長年の懸案事項である介護制度の改革と、新型コロナウイルス危機で負担の増したNHSへの投資に充てる。
政府はまず22年4月に国民保険料を雇用主負担分も含めて1.25%引き上げ、23年以降は同等の税金を別立てで徴収する。税収はイングランドの介護制度やNHSに投資するが、スコットランドとウェールズ、北アイルランドには計22億ポンドの追加資金を介護・医療サービス向けに交付する。
NHSには年120億ポンドを投資し、診療や検査、手術の件数を従来から900万件増やせるよう、設備や人員を拡充する。これにより、急患以外の患者の受け入れ数をコロナ禍前と比べて30%引き上げられるとしている。
介護制度改革では、1人が生涯に支払う介護費用に8万6,000ポンドの上限を設定する。加えて、資産2万ポンド以下の人の介護費用は国が肩代わりし、資産2万~10万ポンドでは費用の一部を援助する。
従来は介護費用の上限がなく、7人に1人が生涯に10万ポンド超の介護費用を支払っていた。また、介護費用の援助を受けられるのは資産2万3,250ポンド以下の人に限られていた。
ただ、ジョンソン首相は19年12月の総選挙前に、所得税や国民保険料を引き上げないと約束していただけに、最大野党・労働党のスターマー党首は「公約違反」と批判している。また同氏は、この増税案は若年層や低・中所得層に負担を強いると指摘し、高所得層の負担を拡大するよう求めている。
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