英国のジョンソン首相は19日、総額8億3,000万ポンドを全国57カ所の商業地再開発に投じると発表した。地域格差を解消する方針の一環。併せて政府省庁の地方移転や、地方の学校教育改善などの施策を打ち出している。
商業地再開発の対象地はいずれもロンドン以外で、商店街の活性化や新たな娯楽・商業施設の建設を進める。うち、イングランド北東部の港町グリムズビーでは映画館や屋内マーケットを、南西部トーントンでは屋外劇場をそれぞれ建設するほか、中部サットンインアッシュフィールドでは、空き店舗のオフィスや飲食店への転用を進める。
同首相は併せて、内務省とビジネス・エネルギー・産業戦略省の一部を2025年までにイングランド中部ストーク・オン・トレントとスコットランドのエジンバラ、英領北アイルランドのベルファストに移す方針を明らかにした。これにより、3,000人超の雇用をこれらの地域に移転できると見込む。政府は30年までに、政府機関の雇用2万2,000人をロンドンから地方に移転することを目指している。
政府はこのほか、地方の公立学校の教育改善に向け、イングランド南部プリマスなど4カ所の地方自治体に1,000万ポンドを支給する。また、最貧困地域の恵まれない生徒の教育支援に1,800万ポンドを投じる。
政府の諮問機関である産業戦略評議会によると、ロンドンと国内他地域の生産性の格差は、1901年当時と同じ水準にまで拡大している。
ジョンソン首相率いる与党・保守党は、2019年の総選挙で格差解消を公約に掲げ、イングランド北部を中心に最大野党・労働党の地盤を切り崩し大勝をおさめた。加えて、欧州連合(EU)離脱を機にスコットランドや北アイルランドの住民の不満が強まり、政府の求心力低下が懸念されている。[労務]
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