英国のスナク財務相は25日、2021/22年度の歳出計画を発表した。新型コロナウイルス危機を受け、今年度の財政赤字額を示す公共部門純借入額(PSNB)が平時としては史上最大の3,940億ポンドに達する見通しの中、国民医療制度(NHS)職員などを除く公務員賃金の凍結や、海外援助の縮小を打ち出している。
同相は、下院での演説で「医療面の危機はまだ終わっておらず、経済的な緊急事態はまだ始まったばかり」と指摘。今回の歳出計画の主眼は、国民の命と生計を守ることと強調した。新型コロナウイルス危機を乗り切る目的で今年度に費やした支出は、2,800億ポンドに上るとしている。
公務員賃金については、NHS職員や平均賃金以下で働く公務員を除き、1年間凍結する。民間部門で失業者が増える中、公務員と民間の格差を解消する狙い。また、コロナ禍による貧富の差の拡大を防ぐため、法定最低賃金の「全国生活賃金」を2.2%引き上げ、8.91ポンドとする。
一方で、海外援助については、与党・保守党が公約に掲げたGDPの0.7%から0.5%に縮小する。
また、来年度は総額1,000億ポンドのインフラ投資を予定する。各省庁の21/22年度の日常的な支出は、今年度から平均3.8%増と、過去15年で最大の伸びとなり、金額では148億ポンド増える見通し。中でも医療予算を66億ポンド拡大するほか、学校予算も22億ポンド増やす。地域開発に向けては、欧州連合(EU)離脱後もEUからの補助金に見合う額を拠出するとしている。
政府は通常、秋の予算案で財政状況や税制改正について説明するが、スナク財務相は先に、新型コロナウイルス危機への対応を優先するとして、これを来年に延期。今回は来年度の各省庁への予算割り振りの発表にとどめるとしていた。
■財政赤字は対GDP比19%に
予算責任局(OBR)はこの日、今年の国内総生産(GDP)が前年比11.3%落ち込むとの見通しを示した。7月時点の予測である12.4%減から上方修正している。21年には5.5%増、22年には6.6%増の回復を見込む。ただ、GDPが危機前の水準に回復するのは22年第4四半期(10~12月)になる見通し。
失業率は、今年は4.4%となり、来年に6.8%でピークに達した後、低下に転じると予想する。
20/21年度のPSNBは3,940億ポンドと、対GDP比で19%に達する見通し。新型コロナウイルス対策の支出拡大を背景に、前年度の560億ポンドから大幅に拡大し、第2次世界大戦以降で最高水準に達するとみている。PSNBは、21/22年には1,640億ポンド、22/23年度には1,050億ポンドに縮小するとみる。
公的債務残高は、今年度は対GDP比で106.5%と、前年度の88.5%から大幅に拡大する見通し。21/22年度以降も拡大を続け、23/24年度に109.4%でピークに達するとみている。
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