自動車製造取引業者協会(SMMT)は24日、英政府と欧州連合(EU)の双方に対し、貿易交渉を妥結させるよう改めて要請した。「通商合意なき離脱」により生じる関税は、英国の自動車業界に2025年までに554億ポンドの損失をもたらしかねないと警鐘を鳴らしている。
SMMTの分析によると、通商合意なき離脱により、英国の車両生産台数は向こう5年間で200万台減少し、年間の累計販売台数は100万台を下回って推移するとみられる。世界貿易機関(WTO)ルールに切り替わった場合、英国製の電気自動車(EV)を欧州で販売する際はコストが平均2,000ポンド上乗せされ、価格競争力を大きくそがれることになる。また、EU域内で製造されたEVの英国価格も2,800ポンド程度引き上げられるため、現行の購入促進策で支給されている1台当たり3,000ポンドが水の泡となると指摘している。
SMMTはさらに、英国を含む欧州の自動車業界は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)を受け、これまでに1,000億ユーロの損失を被っていると主張。来年1月1日から関税が導入された場合、さらに1,100億ユーロの損失が生まれるとしている。
SMMTのマイク・ホーズ最高経営責任者(CEO)は、この日開催したオンラインの年次総会で英政府に対し、新型コロナウイルス対策の影響で一時帰休となった従業員の賃金を補助する「コロナウイルス雇用維持制度」の導入に感謝した。一方で、ブレグジット交渉については「われわれの将来を保障するまであと37日しかない」と強調。自動車業界はパンデミック期に底堅さを見せ、新型コロナウイルスのワクチンは希望をもたらしているが「ブレグジットにはワクチンはない」と強調している。
分析・計測機器大手の堀場製作所(京都市南区)の英子会社ホリバ・マイラ(MIRA)の会長でSMMT代表のジョージ・ギレスピー氏も、パンデミック中に人工呼吸器や医療保護製品の生産にまわった業界をたたえた一方、自動車業界が経済回復の基盤となるべきだとし、EUが交渉条件としてかねて掲げている平等な競争条件(レベル・プレイング・フィールド)の中で競争すべきだと主張した。
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