日産自動車は、英イングランド北東部のサンダーランド工場に5,200万ポンドを投じて新たな大型プレス機を設置したと発表した。同工場での総額4億ポンドの投資計画の一環で、スポーツタイプ多目的車(SUV)「キャシュカイ(日本名:デュアリス)」の新モデルの組み立てに用いる。
新プレス機は設置に1年半を要し、この日に稼働を開始した。年間610万枚の車両パネルのプレスが可能で、同工場で生産する小型SUV「ジューク」の生産にも用いる予定。
同社によると、サンダーランド工場では新型「キャシュカイ」の生産に向け総額4億ポンドを投資する計画で、その一部は英政府からの補助金で賄う。同工場ではすでに、新型「ジューク」の生産に向けても1億ポンドを投資しており、これらを含めて同工場に向こう5年で計10億ポンドを投資する計画という。
同社は2016年10月、当時のメイ政権からブレグジットによるコスト増を補う支援を約束されたことを受け、「キャシュカイ」とSUV「エクストレイル」の新モデルを同工場で生産することを決めた。しかし、世界的な生産体制の見直しを行う中、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る先行き不透明感もあり、2019年2月に新型「エクストレイル」の生産計画を撤回。同工場ではその後、高級車ブランド「インフィニティ」の生産も終了していた。
日産は、英国が合意なしにEUを離脱し、移行期間が設置されなければ、「キャシュカイ」の新モデル生産計画も見直す方針と伝えられており、これまで同モデル向けの生産投資の現状は明らかにしていなかった。ただ、英国はその後にEUと離脱協定で合意し、1月31日のEU離脱後も12月31日までは移行期間とされている。こうした中、今回の発表により「キャシュカイ」の生産準備が予定通り進められていたことが明らかになった格好だ。
フィナンシャル・タイムズによると、「キャシュカイ」向けの4億ポンドの投資計画の大半は既に実行されており、このうち1,100万ポンドを政府が拠出している。
ただ同社は先に、英・EU間で将来的な貿易協定交渉がまとまらず、自動車や自動車部品に10%の関税が課されるようになれば、同工場を含む欧州事業全体の意義が失われると警告している。一方で、フィナンシャル・タイムズは先に、英・EU間の貿易協定がまとまらなければ、同社はサンダーランド工場に生産を集約し、EU域内の拠点を閉鎖する選択肢も検討中と報じている。[日本企業の動向]
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