178年の歴史を持つ英旅行大手トーマス・クックが23日、経営破綻した。同社はかねて資金繰りが悪化し、中国のコングロマリット・復星国際(フォースン・インターナショナル)傘下でリゾート経営を手掛ける大株主の復星旅遊文化集団や債権団と最後まで救済案を巡る協議を続けたが、合意がまとまらず事業を清算することが決まった。これを受け、各国の政府や保険会社は海外で足止めとなった同社顧客60万人の帰国便の手配に追われている。また、世界で2万2,000人の同社従業員が失職の危機にさらされている。
トーマス・クックは1841年に鉄道旅行会社として創業。パッケージツアーの草分けとして、世界最大のツアー会社に成長し、現在ではホテルやリゾート地、航空会社を運営し、顧客数は年1,900万人に上る。ただ、旅行のオンライン予約の普及や英国の欧州連合(EU)離脱を巡る先行き不透明感から経営が悪化し、2019年3月末には純負債が12億4,700万ポンドに達した。同社は復星旅遊文化から9億ポンドの救済を受けることで合意したものの、銀行団からさらに2億ポンドの緊急資金調達を求められていた。
同社は政府に2億5,000万ポンドの支援を要請したが、政府はこれを拒否した。シャップス運輸相は、同社は負債規模の大きさや実店舗重視の戦略から将来性に乏しかったとした上で、「援助を行っても短期間で同じ問題が起きていただろう」と話している。
ジョンソン首相はこの日、足止めとなっている英国人顧客の帰国を手配すると約束した。向こう2週間に英国に戻る予定の顧客は15万人に上る。政府はこの日だけで45機のジェット機をチャーターし、1万4,000人以上を帰国させる予定。一方、トーマス・クックの主要市場であるドイツでは、保険会社が帰国便の手配を支援する。
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