メイ首相は21日、欧州連合(EU)離脱協定法案に盛り込む新提案の内容を明らかにした。最大野党・労働党の議員の支持獲得を狙い、2度目の国民投票実施の是非を巡る下院での採決を約束したほか、EUとの関税同盟を巡る妥協案も提示。一方、与党・保守党の離脱強硬派や北アイルランド・民主統一党(DUP)が反対する「バックストップ(安全策)」についても、懸念を和らげる措置を盛り込んでいる。ただ、すでに与野党からは新提案への批判が噴出しており、6月3日の週に予定される採決で同法案が可決される見込みはなお薄い。
この法案は、メイ首相がEUと合意した離脱協定を実施するための国内法案。ただ、離脱協定自体の修正はEUが拒否しているため、同協定に付随する政治宣言を修正する形で、10項目の新たな措置を盛り込んでいる。その一つとして、同法案が可決されれば、その是非を問う2度目の国民投票を実施するかどうかについて下院で採決を行うことを約束。政府は採決の結果に従うとしている。
労働党が求めていたEUとの関税同盟については、政府が推す製品貿易を対象とした一時的な関税同盟案のほか、いくつかの選択肢について下院で採決する方針。さらに、新労働者権利法案や環境保護局の新設案を打ち出し、労働党の要求通り労働者の権利や環境の保護に努めるとしている。一方、バックストップについては、移行期間が終了する2020年12月までに代替措置でEUと合意することを目指すよう政府に義務付けるほか、バックストップが導入された場合には、英本土と英領北アイルランドに単一の関税が適用されるようにするなどとした。
メイ首相は、同法案の採決は「国民投票の結果を実現する最後のチャンス」と訴え、与野党の下院議員に支持を求めた。ただ、労働党のコービン党首は同首相の新提案について、「関税同盟にせよ諸権利の保護にせよ、すでに議論済みの案の焼き直しに過ぎず、根本的な譲歩ではない」と批判。一方、保守党内の離脱強硬派は関税同盟を巡る譲歩に猛反発しており、一部では同首相の早期退陣を求める声が新たに上がっている。AFP通信によると、これを受けゴーブ環境・食料・農村相は、離脱協定法案の採決が取りやめになる可能性もあると示唆している。[環境ニュース][労務]
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