ドイツで脱石炭に向けた計画を議論する「石炭委員会」は26日公表した最終報告書で、2038年までにすべての石炭火力発電を廃止するよう提言した。これにより経済的影響を受ける地域には、400億ユーロの補償を提供する必要があるとしている。政府はこの案を速やかに実行に移す方針を示している。
同委員会は、2018年6月に政府によって設置され、2030年までの温暖化ガス排出量の削減目標を達成するために必要な石炭火力発電の廃止時期と、影響を受ける事業者および地域への政府補償について検討してきた。当初は2018年中に提言をまとめる予定だったが、さらなる協議が必要として今年2月1日に期限を延期した経緯がある。
同委はまず、2022年までに設置容量500万キロワット相当の褐炭火力発電所と800万キロワット相当の硬炭火力発電所を閉鎖した上で、遅くとも2038年までに全ての石炭火力発電所を閉鎖するよう提案。再生可能エネルギー・インフラの構築が早期に進めば、この最終期限をさらに前倒しするよう促している。個々の発電所の閉鎖時期については、政府と電力会社が協議して決める。
バーバラ・プレトリウス上級委員は、「この提言が採用されれば、ドイツは2030年の気候変動目標を確実に達成できる」と話している。
アルトマイヤー経済相は27日、ドイツ公共放送ARDのインタビューで、同委の提言の実行に直ちに着手する方針を示した。必要な資金の一部は既に2019年度予算に計上済みという。政府は今後、石炭火力発電所の閉鎖計画や、新規雇用の確保などに関する一連の法案を策定するとしている。
独エネルギー大手RWEは同委の提言について、「当社の褐炭事業に深刻な影響を及ぼす」とした上で、「2038年までの全面廃止は、当社にとってあまりにも早過ぎる」とコメントしている。一方、ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は今回の提言を歓迎した上で、電力コストが上昇する可能性を指摘した。これに対しシュルツ環境相は、「環境省の調査では、電力料金の上昇にはつながらないとの結果が出ている」と話している。[環境ニュース][雇用]
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