ドイツのデメジエール内相は19日、イスラム教徒女性が着用するブルカなど顔全体を覆うベールを一部禁止する方針を示した。この前日にメルケル首相率いるキリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU)に所属する各州内相と採択した難民・テロ問題をめぐる共同宣言の一環。AFP通信などが伝えた。
デメジエール内相らは18日の会合で、運転中や公共機関での登記時、国境での出入国の際、学校や大学、裁判所などでのブルカの着用を禁じる方向で合意した。同相は、「顔をあらわにすることはわれわれのコミュニケーションと共存、社会統合に必要な要素だ」と説明。法制化には政府の承認が必要となるが、これに向けて法案の策定を進めるとしている。
この問題をめぐっては、メルケル首相も先に「顔をベールで覆っている女性は統合の機会がほとんどない」と述べていた。
一方、CDU・CSUと連立を組む社会民主党(SPD)はこの方針に反対を表明。差別であり、難民統合を遅らせるものと懸念を示している。また、ユーロ圏解体と反難民を訴える「ドイツのための選択肢(AfD)」がかねて、ムスリム女性のベール着用禁止などを支持していることから、同党の勢力拡大を助長する恐れもあるとしている。
ドイツは昨年、中東・アフリカから100万人を超える難民を受け入れたが、そのほとんどがイスラム教徒。住居や雇用の問題、文化の違いに加え、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」によるテロが相次いだことで、政府は難民政策とテロ対策の両方に追われている。先には難民・亡命申請者に対する規制を強化する方針を示したほか、今回の共同宣言では警察官の増員や監視カメラの設置、二重国籍取得の禁止といった一連の施策をまとめた。
ドイツには現在、人口の約5%に当たる400万人弱のイスラム教徒がいるとされる。
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