英国と欧州連合(EU)は19日、2020年のブレグジット発効後で初となる首脳会議(サミット)を開き、英・EU関係を刷新する一連の取り決めで合意した。新たな防衛・安全保障協定を締結したほか、漁業や食品、炭素排出、出入国管理など幅広い範囲を網羅。英国政府は、これにより国内経済が40年までに約90億ポンド押し上げられるとみている。
英国のスターマー首相はこの日、フォンデアライエン欧州委員長およびコスタEU大統領と会談した。英国政府は一連の合意について、国内経済の成長と雇用支援、コスト削減を目指す政府方針に沿う一方、EUの関税同盟や単一市場、ヒトの移動の自由に復帰するものではないとしている。
BBC電子版によると、交渉はサミット前日の深夜まで続いた。英国は漁業権を巡る大幅な譲歩と引き換えに、EUによる食品検査の簡素化などの成果を獲得。漁業より経済規模の大きい食品産業を優先した格好となり、国内の漁業従事者や最大野党・保守党からは強い批判の声が上がっている。
合意の主なポイントは以下の通り。
■漁業
EUの漁船が38年まで英国領海でこれまで通り操業することを認める。英国政府は国内漁業や沿海地域の支援に向け3億6,000万ポンドを拠出するとしている。
■食品
新衛生・検疫協定により、EUへの食品輸出時の検査が緩和されるほか、動植物の国境検査の一部を相互に撤廃する。英領北アイルランドからアイルランドを含めて、英国からEUへの生ひき肉製品の輸出が可能となる。
■防衛・安全保障
新たな英・EU防衛安全保障協定により、防衛協力や情報共有が促される。EUが防衛企業への融資向けに設立した1,500億ユーロ規模の「欧州安全保障行動(SAFE)」基金を、英企業も利用する道が開かれる。
■炭素排出
英国排出権取引制度(UK―ETS)をEU―ETSと連携させ、鉄鋼やセメントなどの輸出時にEUの「国境炭素調整メカニズム(CBAM)」に基づく課税を避ける。英国政府によると、これにより国内鉄鋼業界は年2,500万ポンドのコストを削減できる見通し。
■出入国管理
英国籍の観光客がEU域内の空港で電子ゲートを利用できるようになる。ペット向けパスポート制度の新設により、旅行のたびに獣医から証明書を得る必要がなくなる。若年層の入国・就労を相互に認める新制度「ユース・エクスペリエンス・スキーム」については、詳細を引き続き交渉するが、英国は人数や期間を制限する方針。[EU規制]
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