英国と米国の両政府は8日、関税引き下げなどを巡る貿易協定を締結したと発表した。英国からの輸出車に適用される関税は27.5%から10%に引き下げられ、対象は年間10万台。鉄鋼製品では25%からゼロ%になる。トランプ米政権が4月に相互関税を一時停止して以降、2国間協定に合意するのは初めて。
スターマー英首相とトランプ米大統領は発表に合わせて電話で会談。トランプ氏が「この合意は何年もかけて練り上げてきたものだ」とスターマー氏に謝意を示すと、同氏は「長年多くの人が実現しようとしてきたことを、われわれの力で成し遂げることができた」と応じた。
両政府によると、相互に牛肉市場を開放することでも合意し、英国農家には1万3,000トンの関税割り当てが適用される。英国が米国から輸入する7億ドル超のエタノール関税は撤廃。一方、大手IT(情報技術)企業などに対する「デジタルサービス税(DST)」については変更されず、代替として米国への輸出を望む英企業の書類手続きを簡素化する「デジタル貿易協定」に署名した。医薬品やその他の相互関税については引き続き協議を続けるとしている。
自動車関税の引き下げは、米国に拠点のない英自動車メーカーにとっては大きなメリットとなる。英政府によると、インドの自動車大手タタ・モーターズ傘下の英高級車メーカー、JLR(旧ジャガー・ランドローバー)だけでも年間数億ドルの減税に相当。同社のエイドリアン・マーデル最高経営責任者(CEO)は「この合意は自動車業界とコミュニティーにとって大きな確実性を確保するものであり、心から歓迎する」と述べた。業界は25万人の雇用を支えているという。
スターマー氏は声明で「英国にとって米国ほど偉大な同盟国はない。戦後80年を経たいまでも、トランプ大統領の下で特別な関係が続いていることをうれしく思う」とコメント。トランプ氏は声明で、「この協定には特に農業分野での米国製品の数十億ドル規模の市場アクセス拡大が含まれており、米国産牛肉やエタノール、米国の偉大な農家が生産するほぼ全ての製品へのアクセスが劇的に向上する」と強調した。
米政府は、欧州連合(EU)や日本などとも協議を継続している。トランプ氏は「今回の協定は米国を尊重して真剣な提案をテーブルに持ち込めば、われわれはビジネスに門戸を開くことを示している」ともつづり、今後も協定締結の発表が続くとした。
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