ドイツを代表する5つの経済研究所は10日発表した春季合同経済予測の中で、今年の国内総生産(GDP)成長率の見通しを昨年9月時点の0.8%から0.1%に引き下げた。米国の経済・通商政策の不確実性が、ドイツ経済の重しになるとの見解を示した。
合同経済予測は、連邦経済・気候保護省の委託により春と秋の年2回発表される。今回の予測は、Ifo経済研究所、RWI経済研究所、ドイツ経済研究所(DIW)、ハレ経済研究所(IWH)、キール世界経済研究所(IfW)が合同でまとめた。
報告書は、トランプ政権による自動車や鉄鋼、アルミニウムへの関税の影響で、今年と来年のドイツのGDP成長率は、それぞれ少なくとも0.1ポイント低下する恐れがあると分析している。追加の関税政策次第では、ドイツ経済はさらに圧迫される可能性もあるが、「現在のグローバル化した経済において、関税がこれほど急激に引き上げられたことはかつてないため、具体的な影響を定量化することは困難だ」と述べている。
経済成長を阻む国内の要因としては、増大する社会保障費、熟練労働者の不足、行政の非効率性といった問題を指摘した。また、企業が中国との競争激化に直面していることにも言及した。
一方で、5月上旬の連立政権発足を目指す中道右派・キリスト教民主同盟(CDU)と姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU)、中道左派・社会民主党(SPD)が打ち出した財政規律緩和策が、2026年のGDP成長率を0.5ポイント押し上げる効果があるとみる。同年のGDP成長率は1.3%になるとの見通しを示した。ただ、政府債務と歳出の増加が景気拡大をもたらす半面、民間の消費や投資が抑制されてしまう「クラウディング・アウト」が起きる可能性を指摘した。
インフレ率については、今年は2.2%となり、来年は2.1%に減速すると予測している。
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