英国のリーブス財務相は26日、下院で春季財政報告を行った。米トランプ政権の米国優先主義を受け悪化した財政見通しを立て直すため、社会福祉支出や省庁予算の削減など、総額140億ポンドの措置を打ち出している。
リーブス氏は、「世界的に先行き不透明感が増したことにより、英国の財政見通しが悪化した」と説明。昨年10月に公表した秋季予算案では2029年度までに99億ポンドの財政黒字を見込んでいたものの、借り入れコストの上昇や経済見通しの悪化を受け41億ポンドの赤字が予想されると明らかにした。
リーブス氏は今回、打ち出した総額140億ポンドの措置を実施することにより、所得税・国民保険料・付加価値税(VAT)の増税を行わないという公約と、29年度までに経常収支の均衡および債務比率の低下を実現する財政規律の両方を守りながら、同年度までに99億ポンドの黒字を回復できるとしている。黒字転換は目標より2年前倒しで27年度に達成できる見通し。
財政報告の骨子は以下の通り。
■社会福祉制度の改革
病人・障害者向け給付金の1つである個人自立手当(PIP)の見直しなどにより、29年度までに社会福祉支出を48億ポンド削減する。
■省庁予算の削減
各省庁の日常的な支出の予算を削ることにより、歳出を29年度までに36億ポンド削減する。ただ、省庁の支出はなおインフレ率を上回るペースで増加すると強調している。
■建築規制の緩和
建築プロジェクトの承認基準を緩和することにより、国内総生産(GDP)と税収を押し上げ、29年度までの借り入れを34億ポンド減らす。
■課税の徹底
租税回避の取り締まりにより、税収を29年度までに22億ポンド拡大する。
■国防支出の拡大
国防支出をGDPの2.5%に引き上げるため、25年度に追加で22億ポンド拠出する。財源は海外援助予算の削減によって確保する。
■投資
秋季予算で約束した1,000億ポンドの設備投資に加え、年20億ポンドを拠出する。
■成長見通し引き下げ
予算責任局(OBR)はこの日、今年のGDP成長率が1%にとどまるとの見通しを示した。昨年10月時点の2%から半減している。ただ、来年の見通しは1.9%に据え置き、27年については従来予想を上回る1.8%の伸びを見込んでいる。今年のインフレ率見通しは3.2%と、0.6ポイント上方修正した。来年と27年はそれぞれ2.1%、2%に減速すると予想。それぞれ0.2ポイント、0.1ポイント引き下げている。
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