ドイツ連邦議会(下院)選挙で3位となった中道左派・社会民主党(SPD)は26日、議会の会派トップである院内総務に、クリングバイル党首を選出した。これにより、選挙を制した中道右派・キリスト教民主同盟(CDU)と姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU)が主導する連立予備協議が、近く始まる見通しとなった。CDUのメルツ党首は4月中旬の新政権樹立を目指しているが、経済政策だけを見ても両者の主張の隔たりは大きく、交渉は難航が予想される。
新政権は2025年度予算の成立にまず取り組む必要があるが、防衛費増加の規模と、それによって生じる数百億ユーロの財源不足をどう補うかが焦点となる。SPDは「債務ブレーキ」と呼ばれる、借入額を対国内総生産(GDP)比で0.35%までに抑える基本法(憲法)上の規定を改革する方針を掲げる。一方、メルツ氏は改革を否定はしていないものの、ドイツ公共放送連盟(ARD)などによると25日、「近い将来に債務ブレーキを改革する可能性はない」との考えを示した。基本法改正には連邦議会で3分の2の賛成が必要で、緑の党に加え、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」もしくは左派党の賛同を得る必要があるためだ。
企業支援策では、CDU・CSU連合は、数十億ユーロ規模の広範な減税に取り組む方針で、法人税の最高税率を段階的に25%に引き下げる考えだ。一方、SPDは企業の設備投資に対し、投資額の10%を税還付の形で資金提供すると公約に掲げていた。
最低時給でも、CDU・CSU連合とSPDの立場は異なる。現在の12.82ユーロの法定最低時給について、SPDは15ユーロへ引き上げるよう求めている。これに対し、CDU・CSU連合は政治的に最低賃金を規定することを拒否している。
南ドイツ新聞によるとクリングバイル氏は党の会議で、連立に合意するかは「最終的には党員が決定を下すことになる」と発言した。約36万人の党員による投票で決める方針だといい、同新聞は投票を実施する場合、2週間程度かかると見積もっている。メルツ氏が掲げる新政権樹立のスケジュールは、達成が危うくなる可能性がある。
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