英国のスターマー首相は5日の演説で、2029年の次回総選挙までに達成を目指す優先政策6項目を発表した。「プラン・フォー・チェンジ」と銘打ち、かねてより強調する国家再建への決意を新たにした格好だ。7月の総選挙で大勝し、14年ぶりに政権に就いた与党・労働党だが、先に発表した過去最大規模の増税案は経済界からの強い反発を招き、国民からの支持も落ち込んでいる。生活水準の引き上げや医療制度の充実など具体的な道筋を示し、支持の回復を狙う。
政策の骨子は以下の通り。
■生活水準の向上
英全土で生活水準を向上させ、先進7カ国(G7)で最高の持続的成長を目指す。国民1人当たりの実質可処分所得と国内総生産(GDP)を引き上げ、働く人々がより多くの賃金を受け取れる社会を実現する。
■住宅建設
総選挙でも公約に掲げた通り、5年間で住宅150万戸を建設する。さらに少なくとも150件の主要経済インフラプロジェクトの計画決定を迅速に行う。政府は7月末時点で、大規模な住宅開発プロジェクトの促進に向けたタスクフォースを立ち上げ、ニュータウン開発のための候補地の選定を進めている。リバプール大学の統計によると、過去半世紀に年間30万戸の住宅建設を達成した政権は存在しない。
■NHSの待ち時間解消
イングランドにおける国民医療制度(NHS)の待機患者のうち、92%を18週間以内に受診させることを目指す。長期の治療待ちや一般家庭医(GP)の予約難などを背景に、NHSへの満足度は過去最低水準に落ち込んでいる。スターマー氏は9月、制度の抜本的改革に向けた10カ年計画を策定していた。
■警察官の増員
警察官を1万3,000人増員し、イングランドとウェールズの全地域に配置する。犯罪行為への取り締まりを強化し、治安の改善を図る。
■未就学児の支援
5歳児の75%が入学時に学ぶ準備を整えていられるよう支援し、子どもたちに「人生の最高のスタート」を提供する。英国では小学校へ上がる前に5歳児が1年間通うレセプションクラスという準備段階がある。ロイター通信によると、この段階に入る時点で4人に1人がトイレトレーニングを済ませておらず、約半数はじっと座っていることもできない状況だという。
■脱炭素化
30年までに再生可能エネルギー発電の比率を少なくとも95%まで拡大することを目指し、経済の脱炭素化を図る。現時点では電力源の3分の1超を化石燃料が占めている。
一方で、野党側からは、優先項目の中に移民政策が含まれていなかったことについて厳しい批判が出た。スターマー氏はこの指摘を受け、「合法・非合法問わず、移民を削減する」と約束している。
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