秋季予算案における国民保険料の引き上げは、低所得者層により大きな打撃を与える――。民間シンクタンクの英財政研究所(IFS)とシンクタンクのレゾリューション基金(Resolution Foundation)が10月31日までに、こうした調査結果を発表した。英国政府は「働く人々」の保護を強調し、国民保険料についても事業主負担率を引き上げる案を掲げているが、最終的に影響を被るのは低所得者であると分析されている。
リーブス財務相が30日に発表した秋季予算案では、国民保険料の事業主負担率を来年4月から1.2ポイント引き上げ15%とし、事業主負担の発生する所得額を現行の9,100ポンドから5,000ポンドに引き下げる内容となっている。公約通り、所得税や付加価値税(VAT)を含め、直接的な労働者向けの増税は回避された形だ。
ただしIFSは、この政策が雇用主側だけでなく労働者にも大きな影響を与えることになると指摘。所得水準で上位20%の人々の雇用コストは約1.5%の上昇にとどまるが、下位20%の雇用コストは4%超上がるとして、「最も肩幅が広い人々に税負担を強いる」という公約に反すると異論を唱えた。
レゾリューション基金によると、今回の過去最大規模となる総額400億ポンドの増税案は、富裕層世帯にも貧困層世帯にもほぼ均等に影響を及ぼす。世帯所得の上位50%は平均で年収が0.6%減るのに対し、下位50%では平均0.8%減になるという。
同基金でリサーチ・ディレクターを務めるジェームス・スミス氏は「初日からいきなりは給与に反映されなくても、最終的には賃下げにつながる」として、「この予算案は間違いなく働く人々に対する増税だ」と警鐘を鳴らしている。
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