フォンデアライエン欧州委員長は9日、欧州議会でハンガリーのオルバン首相を強く非難する異例の演説を行った。ロシアの侵攻を受けているウクライナへの批判的な姿勢や、ロシアおよび中国との関係強化は、欧州連合(EU)の安全保障を危険にさらすと訴えた。
フォンデアライエン氏は、オルバン氏が、侵攻された側のウクライナを批判していることについて、「1956年にソビエト連邦がハンガリーに侵攻したのはハンガリーの責任だと言うようなもの」だと糾弾した。また、ハンガリーがロシア産化石燃料への依存を続けていることや、ロシア国民に対するビザ(査証)規制の緩和を責め、ハンガリー国内で中国の警察官の活動を認めていることを大きな問題だと指摘した。
さらに、ハンガリーは他のEU加盟国の企業に対する増税や輸出規制、恣意(しい)的な調査を実施しており、公共調達では少数の特定企業を優遇していると非難。欧州単一市場が目指す方向に「逆行している」と批判を展開した。
ハンガリーは7月からEU理事会の輪番制の議長国を務めており、欧州議会ではこの日、フォンデアライエン氏に先立ち、オルバン氏が議長国としての方針について演説していた。その中でオルバン氏は、「EUは変化を必要としている」と強調し、EUはロシア産のエネルギーに背を向けることで「経済成長が大幅に押し下げられた」と見解を語った。また「グリーン化は問題を解決しない」との考えを示し、脱炭素化は生産性の低下と雇用喪失につながると主張した。
オルバン氏はハンガリーが議長国に就任した直後にモスクワを電撃訪問し、プーチン大統領と会談。プーチン氏と公式に接触しないEUの方針に反して、停戦や和平について協議した。オルバン氏はその後、中国の習近平国家主席や米国のトランプ前大統領とも会い、ウクライナ情勢について話し合った。
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