英国政府は10日、労働者の権利に関する雇用法の改正案を発表した。解雇・再雇用の慣行の廃止や傷病手当の増額、育児休暇の拡充など28項目から成る「一世一代の改正」としているが、詳細が固まっていない部分もある。大部分で2026年の施行を目指し、同日にも下院に提出する。
改正案では、育児休暇や傷病手当を受け取る権利を雇用初日から労働者に付与。決まった労働時間がなく被用者の求めに応じて働いた時間分の賃金支払いを受ける「ゼロ時間契約」の禁止も盛り込んでいる。勤務時間外に業務対応しない「つながらない権利」や、試用期間などについても議論される。
改正案は、7月の総選挙で圧勝した労働党政権が公約として掲げてきた。レイノルズ・ビジネス貿易相は声明で「最高の雇用主であれば、従業員が仕事に満足できればこそ生産性が高まることを知っている」とした上で、「法改正により生活水準が向上し、企業や労働者、地域社会に機会と安全がもたらされる」と述べた。
ロイター通信によると、この動きは伝統的に労働党に近い労働組合やビジネスロビー団体、一部企業の経営者らからは概ね歓迎されたが、労働組合ユナイトは改正案の不十分さを指摘。ゼロ時間契約を完全には禁止しておらず、労働者が労働組合にアクセスできる規則が骨抜きにされたとしている。
企業側も冷静に受け止めている。英国産業連盟(CBI)のレイン・ニュートンスミス最高経営責任者(CEO)は「政府がわれわれと信頼関係を築き、この法案の詳細を共有することが重要だ」と指摘。英小売協会(BRC)のヘレン・ディッキンソン会長は「季節雇用や試用期間の活用など、詳細について政府と協議することを楽しみにしている」と語った。[労務]
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