ドイツのフェーザー内相は9日、不法移民を抑制するため、16日から全国で国境検査を導入すると発表した。期間は6カ月間。ドイツはすでに、ポーランドやチェコ、オーストリア、スイスとの国境で検査を実施しているが、フランスなどほかの国との国境にも対象を広げる。トラックの国境通過に時間がかかることになり、サプライチェーン(供給網)に影響が出る可能性がある。
ドイツと周辺国は、欧州諸国が国境を越えた人の移動の自由を認め合うシェンゲン協定に加盟しており、国境検査は原則的に撤廃されている。ただシェンゲン協定は、公共の秩序や安全に対する重大な脅威がある場合、国境検査の一時的な導入を認めている。
フェーザー内相は「イスラム過激派テロや、国境を越えた犯罪の深刻な脅威から国民を守ることも目的だ」と説明した。近隣諸国との調整を続け、国境を越える通勤など、日常生活への影響は最小限に抑える考えも示した。
連立政権は8月下旬に西部ゾーリンゲンで発生した無差別殺傷事件を受け、不法移民対策や難民対策の強化を進めている。事件では、難民認定申請が却下され強制送還処分となった後、行方をくらましていたシリア国籍の男が、容疑者として拘束された。
国政与党は1日実施の、旧東独テューリンゲン州とザクセン州の州議会選挙で惨敗。排外主義的な政策を掲げる右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と、移民受け入れの厳格化を主張するポピュリズム政党ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)の台頭を許した。国境検査導入には、22日に控えるブランデンブルク州議会選に向け、移民政策への取り組みを急ぎアピールしたい思惑もある。
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