欧州議会(定数720)選挙の投開票が6~9日に行われ、最大会派の中道右派「欧州人民党(EPP)」が首位に立った。中道左派「欧州社会民主進歩同盟(S&D)」と中道リベラル「欧州刷新(Renew)」は議席数を減らしたものの、それぞれ2位、3位を維持し、これら3会派の協力体制は維持される見込みとなった。ただ、フランスとオーストリアで極右政党が首位に立つなど、極右および右派会派も躍進。一方で、環境会派の議席数は大幅に落ち込んでおり、欧州連合(EU)の今後5年の環境・移民政策などに影響が及ぶ可能性が大きい。
10日午後時点の速報によると、EPPは185議席に増加。S&Dは137議席に、欧州刷新は79議席に、それぞれ落ち込んだ。ただ、これら3会派は合わせて401議席と過半数を確保。今後もEU予算などの重要案件は、これら3会派の協力により合意がまとまる見通しとなった。
環境会派「緑の党・欧州自由連盟(Greeens・EFA)」も71議席から52議席へと大きく減らした。一方、右派「欧州保守改革(ECR)」は73議席に拡大。右派「アイデンティティーと民主主義(ID)」も49議席から58議席に躍進している。
■独仏などでEU懐疑派が躍進
今回の選挙では、EUを主導するフランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相が共に国内のEU懐疑派政党に敗北を喫した。フランスではIDに所属する極右政党・国民連合(RN)が得票率31%で首位に立ち、マクロン氏率いる中道の与党連合(15%)は惨敗。ドイツでも、ショルツ首相率いる中道左派の与党・社会民主党(SPD)の得票率が14%にとどまり、最大野党の中道右派・キリスト教民主同盟(CDU)/キリスト教社会同盟(CSU)だけでなく、右派「ドイツのための選択肢(AfD)」にも敗北した。このほか、オーストリアでもIDに所属する極右の自由党(FPO)が首位に立っている。
■フォンデアライエン氏は右派に支持要請も
欧州議会選の結果は、11月に交代する欧州委員会の人選にも影響する。再選を狙うフォンデアライエン欧州委員長は、自らが所属するEPPが最大勢力となり、前回同様にS&Dおよび欧州刷新の支持も見込む。ただ、必要となる361議員の支持を確保するため、イタリアのメローニ首相率いるECRにも協力を要請する可能性があり、そうなれば今後のEU政策の右傾化につながることになる。
■右派・極右勢力の一致協力は困難
ただ、今回の選挙で躍進したECRとIDが統一会派を組んで影響力を行使する可能性は薄い。ECRのメローニ氏には、IDを主導するフランスのルペン氏も協力を呼びかけているものの、ECRは環境政策の骨抜き化に向けEPPと協力したこともあり、IDと組むうまみは少ない。また、ロシアのウクライナ侵攻を巡っては、メローニ氏がウクライナ支援を打ち出す一方、ルペン氏はロシアに同情的な姿勢で知られる。
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