民間シンクタンクの英財政研究所(IFS)は5月31日、2010年以降の保守党政権下で、英国民の生活水準の伸びは他の先進国を大きく下回ったとの調査結果を発表した。平均可処分所得の伸びは14年間で5.9%と、過去50年の傾向に基づく予測のわずか5分の1にとどまっている。最大の要因は賃金の伸び悩みで、中でも生産年齢人口の平均所得の上昇率は先進諸国に大きく後れを取っている。
IFSによると、保守党政権下では雇用が拡大し、中間所得層向けの減税も実施された。しかし、インフレ調整後の平均所得の伸びは、09/10年度から23/24年度までの14年間で3.5%にとどまった。07年の金融危機以前は、平均2年以下で3.5%の伸びを達成していたという。
一方、25~60歳の平均所得の伸びは07~19年は6%にとどまり、米国(12%)やドイツ(16%)を大きく下回っている。調査対象となった先進14カ国中では11位だった。1995~2007年までは41%で14カ国中3位につけていたが、大きく順位を落とした。
ここ数年の傾向を見ると、賃金の上昇率はインフレ率を上回り、平均所得はコロナ禍前より増えているが、可処分所得はコロナ禍前から変わっていない。IFSはこの要因として、住宅ローン返済額の上昇や、一部の層で増税が行われたこと、雇用の伸び悩み傾向を挙げている。
英国の生活水準を巡っては、英シンクタンクの国立経済社会研究所(NIESR)も5月30日、一般世帯の実質可処分所得は、19年12月の前回総選挙からこれまでに約7%低下したとの分析を示している。[労務]
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