英国の欧州連合(EU)離脱に伴い必要となった新たな通関検査の体制を構築する費用は、少なくとも47億ポンドに上る見通しだ。遅延やシステムの不具合でコストが肥大化しているという。英国会計監査院(NAO)が20日公表した報告書で明らかにした。
NAOは、政府が2020年12月に打ち出した「2025年国境管理戦略」の進行状況を調べた。政府はこの中で、同年までにデジタル化を通じて「世界で最も有効」な国境管理体制を構築するとしていたが、NAOは今回、その中核となる技術には数々の重大な支障が生じていると指摘。政府の計画の「基本方針とスケジュールはあまりにも楽観的で、必要となるシステムの複雑さを過小評価している」と警鐘を鳴らした。
中でも、輸出入および中継に必要な書類手続きの窓口を一本化する制度を巡っては、「省庁を横断した実施案」が存在しないと説明。政府はこの制度については、27年までに「段階的に」導入する方針に切り替えている。
また、EUからの輸入品に対する厳格な通関検査の導入が何度も延期されていることについては、必要な要素を割り出すのが困難なことも相まって、「本来は不要だったはずのインフラや人員への支出がかさんだ」と指摘。「政策の発表が直前になったことや、通関検査の先行き不透明感により、企業や港湾事業者も準備を進めることができなかった」と批判している。
英国はEU離脱を受け、21年にEU単一市場も離脱した。EUはこの時点で、英国からの輸入品に対する厳格な通関検査を導入したが、英国は物流の混乱やコロナ禍、インフレ加速を理由に5度にわたり導入を延期。今年1月末に一部品目への衛生・検疫証明書の提出が義務化され、4月末から対象が拡大されている。
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