英国のスナク首相は24日、原子力産業の人材開発に向け、官民共同で7億6,300万ポンドを投資すると発表した。英国では原子力潜水艦の建造計画や原子力発電の需要拡大に伴い、2030年までに同分野で約4万人の新規雇用創出が見込まれており、これを補充する狙いがある。
政府の拠出額は3億5,000万ポンドで、残りの4億ポンド超は、航空・防衛大手BAEシステムズ、航空エンジン大手ロールス・ロイス、フランス電力(EDF)の英子会社EDFエナジー、エンジニアリング大手バブコック・インターナショナルなどのパートナー企業が負担する。
これにより、今後4年で約5,000人の企業実習枠を確保し、30年までに8,000人超の高技能労働者を育成する計画だ。
政府は併せて、原潜建造拠点となるイングランド北部カンブリア州のバロウ・イン・ファーネス(Barrow-in-Furness)に、今後10年で2億ポンド超を投資する「バロウ転換基金」計画も明らかにした。就労支援や地域社会プロジェクト、バイパス道路建設向けに直ちに2,000万ポンドを投資し、その後10年にわたり毎年2,000万ポンドを医療、住宅、運輸、教育などに振り向ける。
バロウ・イン・ファーネスにあるBAEシステムズの拠点では、アスチュート級原潜が建造されている。今後は、英米豪3カ国の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に基づき、オーストラリアに配備される予定の次世代原潜の建造も予定されている。
スナク氏はこれらの投資計画について、「核抑止力と原子力発電の確保は、重要な国家事業」と説明。「世界で危険や競争が増す中、海上の核抑止力を維持することがかつてなく重要であるとともに、原子力発電は安価でクリーンな国内産の電力を消費者に提供できる」としている。[労務]
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