ドイツのリントナー財務相は23日、2023年度の補正予算案を29日に提出すると明らかにした。連邦憲法裁判所が過去の予算案を無効とする判決を下したことを受けた措置で、今年度の支出の合憲性を確保するために、新たな借り入れを制限する「債務ブレーキ」を停止する。一方、ショルツ首相は24日、24年度の予算案は年内にまとめると述べた。
リントナー氏は「予算案の付帯条項で非常事態を宣言することで債務ブレーキを停止し、新規借り入れを可能とする」と説明。ただ、実際に新たな借り入れを実施するわけではなく、光熱費補助などの支出に憲法上の根拠を与えるための措置と説明している。
ドイツは憲法に相当する基本法で、構造的財政赤字を対国内総生産(GDP)比で0.35%までに抑えることを定めている。債務ブレーキと呼ばれるこの措置は非常時には停止することが可能で、20年度のコロナ禍に続いてロシアのウクライナ侵攻が起きたことで、停止されたままになっていた。政府は23年度から債務ブレーキの順守を再開したが、今回の憲法裁の決定を受けて、4年続けて非常事態として例外措置を取る形だ。
憲法裁判所が無効としたのは、気候変動基金に600億ユーロを振り向けた2021年度の補正予算。コロナ禍による非常事態を理由に上限を超えて借り入れた資金を、別の目的に充てることを違憲と判断した。ただ同じ理由から、エネルギー危機を受けた光熱費補助への転用も違憲とみなされる可能性が高まっている。光熱費補助は22年に開始されたが、一部は23年度に支出されている。
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